院評定

院評定（いんのひょうじょう）

院評定とは、院政の時代に上皇や法皇が議定を主宰し、その議定に参加するメンバーのことを指します。評定に参加する資格を持つ公家たちは「院評定衆」として知られていました。平安時代末期に入ると、内裏での陣定に代わり、上皇や法皇は自らの御所内で主要な議定を行うようになり、特定の公卿や院近臣のみがその参加を許されました。

後嵯峨院の院政の下となった寛元4年（1246年）には、制度改革が実施され、鎌倉幕府の評定衆をモデルに新たに選ばれた5名の公卿が評定衆に任命されました。彼らは、西園寺実氏、土御門定通、徳大寺実基、吉田為経、葉室定嗣の5人です。また、議定の開催場所は院庁の文殿、通称「院文殿」に定められました。この改革は、鎌倉幕府が提案した「徳政」に基づく、それまでの不公平を是正する試みでもありました。実際に新体制による初の評定が行われたのは同年の11月3日のことです。

院評定では、訴訟や政務が処理されるだけでなく、院文殿には記録所の機能も持たせられました。ここでは、律令法や儒教に精通した中下級公家が職員として雇われ、院評定が円滑に行われるためのサポートを行いました。さらに、弘安9年（1286年）には、院評定が政務を担当する「徳政沙汰」と訴訟に関する「雑訴沙汰」に分割され、それぞれの担当者が定期的に評定を行う体制が整いました。特に雑訴沙汰では中納言や参議が参加し、より多くの訴訟処理が行われています。

正応6年（1293年）には、伏見天皇の親政の影響下で院評定が一時的に朝廷に移され、その際には雑訴沙汰を補完するための記録所が設立されました。その後は、院文殿での院評定が院政の中核として機能し続けますが、南北朝時代末期には室町幕府によってその政治的権限が奪われる運命となります。

江戸時代に入ると、霊元天皇の譲位に伴い院評定は復活し、定員は3名と定められ、正三位以上の公卿から家格を問わず選出されることとなりました。しかし、桜町上皇の時代に機構改革が試みられた際にはその活動が一時停止しました。院評定は院伝奏と共に「院両役」として知られ、江戸幕府の同意の下、メンバーが任命される形式が取られました。これは、幕府側が上皇や法皇の人事案を形式的に追認するものであり、実質的な権限を持つものではありませんでした。役料は20石支給され、仙洞御所からの蔵米が賄われました。院評定は、上皇や法皇の補佐を行い、仙洞御所内での様々な事務を担当しました。院評定が不在の場合には一時的に評定加勢が設けられることもありました。

関連項目

• - 公家政権
• - 評定衆

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