徳大寺実基

徳大寺実基（とくだいじ さねもと）

徳大寺実基は、鎌倉時代中期に活躍した公卿であり、最終的には従一位太政大臣にまで昇りつめました。徳大寺相国、または水本太政大臣とも号されました。彼は左大臣であった徳大寺公継の次男として生まれ、母は白拍子の五条夜叉でした。

生涯

実基は建保元年（1213年）に叙爵されたのを皮切りに、侍従、右少将、讃岐権介などの官職を歴任し、順調に昇進を重ねました。承久元年（1219年）には従三位に叙せられ、公卿としての地位を確立します。承久3年（1221年）には遠江権守を兼ね、その後も正三位、権中納言、左衛門督、検非違使別当と重要な役職を歴任しました。

嘉禄2年（1226年）には中宮権大夫となり、安貞元年（1227年）に父公継が亡くなった際には喪に服しました。安貞2年（1228年）には正二位に昇叙し、寛喜元年（1229年）には中宮権大夫を辞任。嘉禎元年（1235年）には権大納言に昇任し、大嘗会検校を務めました。延応元年（1239年）に一度辞任するも、仁治2年（1241年）には大納言に還任し、右近衛大将を兼ねました。

寛元4年（1246年）には内大臣に任ぜられ、右大将は元の如し。宝治2年（1248年）に右大将を辞任。建長元年（1249年）に内大臣を辞そうとしますが、建長2年（1250年）に辞任。

建長5年（1253年）には徳大寺家として初めて太政大臣に任ぜられ、建長6年（1254年）には従一位に昇叙されました。しかし、その直後に太政大臣を辞任し、文永2年（1265年）に出家して圓覚と号しました。文永10年（1273年）に薨去。

人物像と業績

実基は内大臣在任中、鎌倉幕府の要請で創設された院評定の一員として後嵯峨院政を支えました。学問や故実に精通する一方で、必要とあれば先例に囚われず現実的な判断を下すことを是とする柔軟な思考の持ち主でした。その思想は『徒然草』にも伝えられる挿話や、後嵯峨院に提出した奏状に表れています。奏状における王権至上主義と合理主義・撫民重視の姿勢は、実基の死後に展開された弘安徳政にも影響を与えたと考えられています。

実基は法律にも明るく、文永元年（1264年）には後深草上皇に名例律を進講しています。また、中原章澄が編纂した法書『明法条々勘録』は、実基への諮問とその回答を元に書かれており、彼の法律知識の高さが窺えます。

実基の日記である『実基公記』（『徳大寺相国記』）は断簡として現存しており、行幸や譲位に関する部類記も伝えられています。

前内大臣から太政大臣への補任

寛元4年（1246年）の久我通光の例に続き、実基は前内大臣から太政大臣に昇進した2例目となりました。この背景には、摂関家の分立や西園寺家の台頭があり、前内大臣から太政大臣への昇進ケースが増加したと考えられます。徳大寺家初の太政大臣就任である実基の昇進は、右大臣・左大臣を経ていない点や、太政大臣就任後に従一位に叙せられている点から、名誉職的な意味合いが強かったと見られています。

系譜

父：徳大寺公継（1175-1227）
母：白拍子の五条夜叉
妻：中納言藤原頼平の娘
男子：徳大寺公孝（1253-1305）

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