陳徳

陳徳（ちん とく）は、元末から明初の時代に活躍した軍人であり、字を至善と称しました。農家に生まれながらも、その勇猛さと優れた力量で頭角を現し、朱元璋の勢力下で重要な役割を果たしました。

彼は定遠で朱元璋に帰順し、その才能を見込まれて万夫長に任命され、各地の戦いに従軍しました。寧州、徽州、衢州、婺州などの都市攻略で功績を重ね、元帥にまで昇進しました。特に、李伯升が長興に攻め入った際には、救援に駆けつけこれを撃退し、その名を轟かせました。

南昌の救援では、鄱陽湖の戦いで姚平章を捕らえるという大きな戦果を挙げました。また、朱元璋が乗る船が浅瀬で座礁した際には、自ら奮戦し、体に九本の矢を受けながらも決して退かず、主君を守り抜きました。武昌の平定にも貢献し、その後も張士誠の軍を旧館で破るなど、数々の戦いで勝利を収めました。これらの功績により、天策衛親軍指揮使に抜擢され、後に僉大都督府事に進みました。

徐達に従って北伐に参加した陳徳は、元の汴梁を攻略し、河南行都督府が設置されると、その府事を代行し、各地で発生した反乱を鎮圧しました。山西遠征では、沢州の磨盤寨を破り、参政の喩仁を捕縛しました。徐達軍と合流後は、平陽、太原、大同などの主要都市を次々と攻略し、黄河を渡って奉元、鳳翔を奪取し、秦州にまで進軍しました。元の守将である呂国公を追撃して捕らえ、その勢いを止めることなく、慶陽の戦いでは、敵の使者を全て捕らえ、慶陽を陥落させました。古城での戦いでは、ココ・テムルを破り、8万もの兵を降伏させるという圧倒的な勝利を収めました。

洪武3年（1370年）には、その功績が認められ、臨江侯に封じられ、世襲の権利を与えられました。翌年には、傅友徳に従って夏の攻略に参加し、別働隊を率いて綿州に侵入、龍徳を攻略し、呉友仁の軍勢を打ち破りました。漢州を制圧した後、向大亨、戴寿らが成都へ逃走すると、これを追撃して破り、傅友徳と共に成都を包囲しました。夏の平定後、陳徳は多大な褒美を賜り、開封に帰還しました。

洪武5年（1372年）、陳徳は左副将軍として、馮勝と共に漠北へ遠征し、別篤山で元軍を打ち破るという戦果を挙げました。さらに、甘粛を攻略し、亦集乃路を奪取し、その防衛のために兵を残して帰還しました。翌年には、朔方に進出し、三岔山で元軍を破り、副枢の失剌罕を含む70人以上を捕らえました。また、答剌海口の戦いでは、600人を斬首し、同僉の忻都ら54人を捕獲しました。その後、洪武7年（1374年）には北平で練兵を行い、洪武10年（1377年）には鳳陽に帰還しました。

洪武11年（1378年）、陳徳は亡くなり、その功績を称えられ、杞国公の爵位を追贈され、諡号として「定襄」が贈られました。息子の陳鏞が臨江侯の爵位を継承しました。陳鏞は、洪武16年（1383年）に征南左副将軍となり、龍泉諸山の反乱を鎮圧し、開封で練兵に励みました。洪武19年（1386年）には、会州に城を築き、洪武20年（1387年）には、馮勝に従ってナガチュ討伐に出陣しましたが、本隊と別の道を通ったために連絡が取れず、戦死しました。

洪武23年（1390年）、陳徳は生前の出来事を遡って、胡惟庸の党であったとされ、西征の際の罪を問われ、その爵位を剥奪されてしまいました。これは、彼の輝かしい功績に対する不当な評価であり、後世に大きな教訓を残す出来事となりました。

このように、陳徳は多くの戦場で武功を立て、明朝の建国に貢献した一方で、政治的な陰謀に巻き込まれ、不遇な最後を遂げた人物として知られています。

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