陸抗

陸抗（りく こう）

陸抗（りく こう、226年 - 274年）は、中国三国時代の呉の武将。字は幼節（ようせつ）。父は呉の名将・陸遜。呉の衰退期を支え、西晋の名将・羊祜（ようこ）との交流は後世に語り継がれています。

生涯

父の汚名をすすぐ

陸抗は陸遜の次男として生まれました。父・陸遜は、孫権晩年の政争に巻き込まれ、失意のうちに亡くなりました。陸抗は20歳で父の跡を継ぎ、建武校尉に任じられ、武昌に駐屯します。孫権は陸遜に疑念を抱いており、陸抗に父の疑惑について詰問しました。陸抗は臆することなく、一つ一つ丁寧に弁明し、孫権の疑念を晴らしました。

孫呉の柱石へ

孫権の死後、孫亮、孫休の時代にも重用され、鎮軍将軍に任命され、西陵方面の軍事指揮を任されます。蜀漢が魏に滅ぼされた後、呉は蜀の旧将・羅憲が守る永安城を攻撃しますが、攻略に失敗。陸抗が援軍として駆けつけますが、魏の援軍の到着により撤退を余儀なくされます。

孫晧（そんこう）の時代になると、陸凱（りくがい）と共に呉を支えます。陸凱の死後、孫晧は陸凱の一族を迫害しようとしましたが、陸抗の存在を恐れて実行できませんでした。

270年、陸抗は大司馬に任命され、西陵方面の軍事の総指揮を執ります。陸抗は、国政の問題点を指摘する上疏を行い、孫晧の寵臣たちの専横を諫めました。

西陵の戦い

272年、西陵督の歩闡（ほせん）が呉に反乱を起こし、晋に降伏しました。陸抗は直ちに西陵城へ向かい、二重の包囲陣を構築。晋の援軍に備えました。晋の羊祜が江陵に侵攻するそぶりを見せると、部将たちは江陵への防衛を提言しますが、陸抗は西陵の重要性を説き、動じません。羊祜の輸送作戦を阻止するなど、巧みな戦略で晋軍を翻弄し、最終的に西陵城を陥落させ、反乱を鎮圧しました。この戦いで、陸抗は卓越した軍事手腕を発揮し、呉を守り抜きました。

反乱鎮圧後、陸抗は都護の職を加えられました。相次ぐ軍事行動で疲弊した国を憂い、国力回復を願い出ます。

273年、陸抗は大司馬に任じられ、荊州牧を兼任します。274年、病に倒れた陸抗は、領土防衛の重要性と募兵制の改革について上疏し、呉の将来を憂慮しながら亡くなりました。

人物・評価

陸抗は、父・陸遜の遺風を受け継ぎ、先見の明を持った名将として評価されています。陳寿は「陸抗はよくその身を律し、先見の明を以て、父の遺風を良く受け継いだ」と評しました。東晋の何充（かじゅう）は「陸抗は『存則呉存、亡則呉亡』というべき存在であった」と評しています。晋の名将・羊祜とは敵でありながら互いを認め合い、交流を深めました。この関係は「羊陸之交」として語り継がれています。

逸話

陸抗は羊祜と互いに贈り物をするなど交流がありましたが、孫晧はそれを疑い詰問しました。しかし、陸抗は堂々と反論したといいます。陸抗と羊祜の交流は、敵対関係にある者同士でも友情を育むことができるということを示しています。

家族

陸抗には多くの子がおり、陸晏（りくあん）、陸景（りくけい）は晋の呉征伐で戦死しました。陸機（りくき）、陸雲（りくうん）は西晋に仕え、文学者として名を残しましたが、八王の乱に巻き込まれ、一族皆殺しにあい、陸抗の血筋は絶えました。

もう一度検索