震災復興再開発事業

震災復興再開発事業とは

震災復興再開発事業とは、大規模地震によって甚大な被害を受け、生活基盤や都市機能が失われた地域において、都市機能の回復と、被災を機とした都市再開発を合わせて行う事業です。被災した地方自治体が中心となり、国や都道府県の協力を得て、数年単位の事業計画を策定します。その後、被災者や地域住民との合意形成を図りながら、事業が実行に移されます。この過程では、行政と住民の意見が一致するまでに、多様な開発の展開を経ることが少なくありません。

関東大震災からの復興

1923年（大正12年）9月1日に発生した関東大震災は、東京を中心に甚大な被害をもたらしました。政府は復興計画を主導し、内務大臣の後藤新平を中心に「帝都復興院」を設立。後藤は、

遷都はしない
復興費は30億円とする
欧米の最新都市計画を採用する
地主には断固たる態度で臨む

という基本方針を打ち出しました。しかし、事業規模は縮小され、後藤の当初の計画は実現しませんでした。また、復興院内部での対立や、予算削減を求める議会との対立など、多くの困難に直面しました。復興院は廃止され、その後「復興局」が設置されましたが、その運営を巡り疑獄事件も発生しました。

しかし、こうした混乱の中でも、現在の内堀通り、靖国通り、昭和通りといった都心の主要道路は、この復興事業によって整備されました。また、焼失区域全域に対する土地区画整理事業が実施され、密集した市街地の再編が行われました。

震災復興橋梁

関東大震災では、多くの橋梁が大きな損傷を受けました。そこで、復興事業では、地震に耐えうる恒久的な橋梁の建設が計画されました。隅田川には、相生橋、永代橋、清洲橋、両国橋、蔵前橋、厩橋、駒形橋、吾妻橋、言問橋の9つの橋が架けられ、これに震災を免れた新大橋を加え「隅田川十橋」と呼ばれました。これらの橋梁は、それぞれ異なるデザインが採用され、都市景観に新たなシンボル性を与えました。

特に、内務省東京復興局が担当した隅田川六大橋（相生橋、永代橋、清洲橋、駒形橋、言問橋、蔵前橋）は、美観が重視され、外国の事例や芸術家の意見も参考にしながら、デザインが決定されました。これらの橋梁は、タイドアーチ、自碇式吊橋、ゲルバー桁橋など、多様な構造が用いられました。さらに、橋詰広場を設け、派出所や公衆便所などの公共施設も整備されました。

震災復興小学校建設

震災復興事業では、小学校の校舎建設も重要な課題でした。アメリカからの義援金なども活用し、鉄筋コンクリートの校舎が建設されました。これらの校舎は、ドイツ表現主義の影響を受け、合理主義に基づいた設計が導入されました。具体的には、水洗トイレ、暖房設備、理科教育や公民教育を重視した教室などが整備されました。しかし、教育局との間で、作法室の設置を巡って対立が生じたこともありました。

震災復興公園

小学校と公園を併設する手法により、防災用の緑地・公園が設けられました。東京市内には52箇所に公園が設置されました。また、隅田公園、浜町公園、錦糸公園といった大規模公園も整備されました。これらの公園は、災害時の避難場所としての役割も担いました。

復興事業の完成と終了

帝都復興事業は、1929年頃には完成の域に達しました。同年には、復興状況を説明する展覧会が開催され、1930年には昭和天皇が東京市内を巡幸されました。しかし、復興事業の中心人物であった後藤新平は、事業の完成を見ることなく死去しました。復興局は1930年に廃止され、1932年にはすべての復興事業が終了しました。

横浜市の復興

関東大震災では、横浜市も甚大な被害を受けました。横浜市は復興計画を策定し、公園や緑地を組み合わせた都市計画を立てました。都心の横浜公園付近や遊郭跡地には円形公園が整備され、公館地帯には大規模公園が計画されました。また、これらの公園間を結ぶ広幅員の道路や遊歩道も整備されました。

北但馬地震からの復興

1925年（大正14年）には、北但馬地震が発生し、兵庫県城崎町と豊岡町に大きな被害をもたらしました。城崎町では、温泉と教育の復興を重視し、土地区画整理事業や共同浴場の再建が行われました。豊岡町では、耕地整理事業を基盤とした都市改造が進められ、格子状の道路や円形公園、近代的な駅前通りなどが整備されました。

その他の震災

1943年には鳥取地震、1964年には新潟地震が発生しました。鳥取地震では、都市計画街路の拡築や防災施設の設置が行われましたが、応急的な整備にとどまりました。新潟地震では、液状化現象による被害がクローズアップされ、地震保険制度が創設されました。1978年の宮城県沖地震では、都市型の災害の特徴が現れ、集団移転事業や仮設住宅の建設が行われました。

阪神・淡路大震災からの復興

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は、兵庫県南部を中心に甚大な被害をもたらしました。この震災からの復興は、成熟した都市機能が瞬時に壊滅するという未曽有の経験であり、多様な価値観を持つ市民間の合意形成に時間を要しました。住宅地区改良事業や住宅市街地総合整備事業、密集住宅市街地整備促進事業などが展開され、被災地の復興が進められました。

まとめ

震災復興再開発事業は、過去の震災の経験を踏まえ、都市機能の回復だけでなく、より安全で快適な都市環境を創造するための重要な取り組みです。しかし、事業の推進には、多くの課題や困難が伴うことも事実です。過去の事例を参考に、今後の災害に備えた都市づくりを進めていくことが重要です。

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