霜月神楽

霜月神楽とは

霜月神楽（しもつきかぐら）は、旧暦11月（現在の12月から1月頃）に行われる神楽のことで、湯立（ゆだて）と組み合わせて行われることから湯立神楽とも呼ばれます。また、伊勢神宮外宮の神楽を起源とするため、伊勢流神楽という別名も持ちます。

霜月神楽の起源と背景

神楽は元々、旧暦11月に行われる行事と考えられていました。古代・中世の宮中における園韓神社の神楽や、伊勢神宮外宮の御師による神楽も、この時期に行われていました。伊勢御師の神楽は明治時代に衰退しましたが、それ以前には熊野信仰や修験道、陰陽道、修正会などの要素と結びつき、日本各地に広まったとされています。

旧暦11月は、神や自然の力が衰える時期とされ、魂の再生や更新を目的とした儀式が行われました。その際、熊野の再生儀式である湯の清めや、忌籠の呪法が取り入れられ、湯立として現代に伝えられています。

霜月神楽の祭場

祭場となる舞台の庭には、御幣などで作られた神籬が神座として飾られます。舞台中央には湯釜が設置され、その上には白蓋や大乗、雲などの天蓋が下げられます。周囲には注連縄や切紙飾が巡らされ、神々を迎える準備が整えられます。湯釜を中心に、夜通しで祈祷、祝詞、神人による神楽舞などが行われます。

霜月神楽の儀式

霜月神楽の具体的な方法は、地域や神社によって異なりますが、基本的には以下の流れで行われます。

1. 湯立: 特定の川や滝から汲んだ水を釜で沸かし、神前に供えます。その後、参列者に熱湯を振りかけ、祓い清めます。
2. 神名帳読上げ: 招待する神々の名前が書かれた神名帳を読み上げます。
3. 採物舞: 前夜には、素面で採物（神楽の際に手に持つ道具）を使った舞で神々を招きます。
4. 願上: 神を讃える歌や祝詞を奏上します。
5. 神送り: 夜半には、招待した神々を送る儀式を行います。
6. 直会: 神事の後、神酒や食事を参加者で共にします。
7. 面形舞: 後夜には、鬼や翁などの面をつけた舞を奉納し、神を楽しませます。
8. 祝福の式: 最後に、参加者への祝福を行います。

特に、神位は低いものの、地元との繋がりが深い神に対しては、手厚いもてなしをします。

代表的な霜月神楽

以下に、代表的な霜月神楽をいくつか紹介します。これらの他にも、霜月神楽の伝統を継承した神楽は全国各地に存在します。

秋田県横手市大森町八沢木： 重要無形民俗文化財「保呂羽山の霜月神楽」
長野県下伊那郡天龍村： 重要無形民俗文化財「天龍村の霜月神楽」
長野県飯田市（旧南信濃村・上村）： 重要無形民俗文化財「遠山の霜月祭」
愛知県奥三河地方： 重要無形民俗文化財「花祭 (霜月神楽)」

参考文献

板谷徹「霜月神楽」『日本歴史大事典 2』（小学館 2000年）
久保田裕道「霜月神楽」『日本民俗大辞典 上』（吉川弘文館 1998年）
山路興造「霜月神楽」『日本史大事典 3』（平凡社 1993年）
青木周平「霜月神楽」『国史大辞典 7』（吉川弘文館 1986年）

関連項目

* 冬祭り

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