青山二郎

青山二郎

青山二郎（1901年6月1日 - 1979年3月27日）は、日本の装丁家、美術評論家であり、骨董収集・鑑定家、数寄者としても知られています。その卓越した審美眼と、既存の価値観にとらわれない自由な生き方は、多くの文化人に影響を与えました。

生涯

1901年、東京市麻布区新広尾町（現在の東京都港区）で、精力剤「オットセイ丸」の製造販売で財を成した資産家の次男として生まれました。幼い頃から絵画や映画に親しみ、自身も才能を発揮しました。中学生の頃から陶器や骨董品の収集に興味を持ち、その天賦の才は早くから開花します。1927年、26歳の若さで実業家・横河民輔が蒐集した中国陶磁器2000点の図録作成を任され、その鑑識眼は天才的と評されました。

1930年には舞踊家の武原はんと結婚。麻布一の橋に居を構えると、隣に作家の永井龍男が引っ越してきます。これをきっかけに、小林秀雄、中原中也、河上徹太郎、三好達治、大岡昇平といった文学仲間が青山のもとに集うようになり、彼の家は「青山学院」と呼ばれるサロンのような場所になりました。その他にも、北大路魯山人、宇野千代、白洲正子、加藤唐九郎、秦秀雄など、多彩な人々との交流を持ち、その高等遊民的な生き方は、多くの作家によって語り継がれています。

交友関係と「青山学院」

青山二郎の自宅には、小林秀雄をはじめとする多くの文人たちが集い、交流を深めました。彼らの集まりは「青山学院」と呼ばれ、文化的なサロンとして機能しました。白洲正子や宇野千代なども青山に師事し、その影響を受けました。また、青山が後見人を務めていた銀座のホステス、坂本睦子を巡っては、彼女の愛人でもあった大岡昇平がモデル小説『花影』を執筆し、青山をモデルとした人物が登場します。

民藝運動との関わり

若い頃には柳宗悦や浜田庄司らの民藝運動に参加しましたが、やがて彼らの提唱する民藝理論に矛盾を感じ、袂を分かつことになります。しかし、柳の甥である石丸重治と雑誌『山繭』に関わったことがきっかけで、小林秀雄と出会い、深い友情を育みました。骨董を愛する中で培われた眼は、物事の本質を鋭く見抜き、時に手厳しい批評も行いました。親友である小林秀雄を、酒席で何度も泣かせたという逸話も残っています。

晩年

晩年は、高級マンション「ヴィラ・ビアンカ」で暮らし、静岡県伊東市に別荘を構えました。1979年3月27日、自宅で逝去。享年77歳。法名は春光院釋陶経。

人物

青山二郎は、幼少の頃から芸術に対する深い造詣を持ち、独自の美意識を確立しました。骨董の世界においては、その卓越した鑑定眼で多くの人々を魅了しました。また、その自由奔放な生き方や、飾らない人柄は、多くの文化人に愛され、彼を中心に独特な文化圏が形成されました。青山二郎の存在は、日本の近代文化史において、特筆すべきものと言えるでしょう。

著書

『眼の引越』
『青山二郎文集』
『青山二郎全文集』（上・下）
『鎌倉文士骨董奇譚』
『眼の哲学・利休伝ノート』
『骨董鑑定眼』

参考文献

* 森孝一 編『青山二郎の素顔』里文出版、1997年2月。ISBN 4898060536

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