青蔵鉄道

青蔵鉄道（せいぞうてつどう）

青蔵鉄道は、中国西部の青海省西寧（せいねい）とチベット自治区の首府ラサを結ぶ、総延長1,944kmに及ぶ高原鉄道です。青蔵鉄路公司によって運営され、「青蔵線」とも呼ばれています。日本のメディアでは「青海チベット鉄道」という名称も用いられます。

この鉄道の名称は、青海省の「青」とチベットの「蔵」を組み合わせたものです。西部大開発の象徴的なプロジェクトとして、1984年までに第一期計画が完了し、2001年から第二期計画を経て、2006年7月1日に全線が開通しました。建設費は4,400億円とされています。

外国人や、中国政府が自国民と主張するものの区別している台湾人がラサまで乗車する場合、チベット入域許可証が必要となり、旅行会社が主催するツアーに参加する必要があります。時期によっては、形式的にツアーに参加しながらも実質的には個人旅行として乗車することも可能ですが、シーズンによっては乗車券のほとんどが団体向けに確保されているため、個人での入手は困難です。

建設の歴史

第一期建設計画

1957年に毛沢東が青蔵鉄道の建設を提唱しました。第一期計画では、青海省の省都西寧から、同省海西モンゴル族チベット族自治州のゴルムドまでの800kmが建設されました。1979年9月に単線として完成し、1984年までに複線化されました。この区間は、海抜2,000mから3,000m程度の高度です。

第二期建設計画

2001年、国務院は262億人民元を投じて、ゴルムドとラサを結ぶ区間の建設を決定し、同年6月29日に着工しました。この第二期計画区間は全長1,144kmに及びます。2005年10月15日に全線の基礎計画と軌道敷設が完了し、貨物輸送が開始されました。そして2006年7月1日には、ゴルムド - ラサ間の旅客営業運転が開始されました。

列車運行

各列車は、崑崙山脈やチベット[[高原]]を日中に通過するように運行時間が設定されています。列車はゴルムド駅で、高地用の中国国鉄NJ2型ディーゼル[[機関車]]に交換されます。また、世界最高所駅であるタングラ駅を通過します。

鉄道の利用料金は航空運賃よりも高くなることもありますが、車窓からの美しい景色や食堂車での食事など、鉄道ならではの旅行体験ができます。列車の運転速度は、海抜5,000mまでは最高160km/h、それ以上では80km/hとなっています。また、医師と看護師が同乗し、高山病患者に対応しています。

貨物列車も運行されており、中国各地からラサへの貨物の7割が青蔵鉄道によって輸送されています。これにより、ラサまでの物流コストが大幅に削減されました。

困難な建設と環境への配慮

青蔵鉄道のチベット区間には、タンラ山脈を越える標高5,071mの唐古拉峠があり、近くの唐古拉駅は海抜5,066mで世界一高い場所にある鉄道駅となっています。平均海抜は約4,500m、4,000m以上の区間が960kmも続くため、高所での鉄道建設は世界でも類を見ません。

ゴルムド - ラサ間には、550kmにも及ぶ凍土地帯が広がっており、その対策として、基礎杭を深く打ち込み高架とする工法や、永久凍土区間では、地中温度の上昇を防ぐため、アンモニアを封入した放熱杭が用いられています。しかし、将来的な地球温暖化による永久凍土の融解への対策も必要とされています。

また、沿線のフフシル山地にある「ホフシル自然保護区」では、チベットカモシカをはじめとする希少な生態系を保護するため、当初の予算を大幅に上回る費用を投じて、動物用通路の設置や採石場の移設など、環境保全に配慮した建設が行われました。

車両

機関車

全線非電化のため、ディーゼル[[機関車]]が全列車の牽引を担当します。アメリカから輸入されたNJ2型が、高地対策を施された専用機として使用されています。また、機関車不足を補うため、中国製の東風8B型も投入されています。

客車

寒冷で空気の希薄な地域を走行するため、気密性と断熱性に優れた25T系客車が使用されています。車内には酸素供給設備があり、高山病対策が施されています。寝台車には酸素吸入設備や個人用液晶モニターが設置され、食堂車の厨房は完全電化されています。また、トイレは真空吸引式で、環境保護のため排水はタンク貯蔵式です。

今後の展望

青蔵鉄道の開通により、チベットの観光業が発展し、物流も大きく改善されると期待されています。また、軍事物資や人員を運搬する重要な路線としても利用されています。

2014年には、青蔵鉄道の支線がシガツェ市まで延伸され、将来的にはネパールとの国境、さらにカトマンズまで延伸する計画も進められています。

2016年には、全線にわたるレール交換工事が完了し、列車の乗り心地と安全性が大幅に向上しました。

メディアでの紹介

青蔵鉄道は、NHKをはじめとする多くのメディアで紹介され、その壮大な車窓風景や沿線の文化が伝えられています。

車窓の見どころ

車窓からは、チベット[[高原]]の雄大な自然や、そこに暮らす人々の生活を垣間見ることができます。

接続路線

西寧駅：蘭青線
飲馬峡駅：敦格線
ゴルムド駅：格庫線
ラサ駅：ラサ・シガツェ鉄道・川蔵線

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