靳歙

靳歙（きん きゅう）について

靳歙（きん きゅう、? - 前183年）は、秦から前漢にかけて活躍した名将であり、劉邦に従って数々の戦功を挙げました。彼の雅号は信武侯、また粛侯の称号を受けています。靳歙は前漢建国の功臣の一人として位置付けられ、その栄光の歴史は今日に至るまで語り継がれています。

経歴

靳歙は初め、侍従として劉邦に従事し、宛朐（えんく）で軍を起こすことに貢献しました。紀元前208年、彼は夏侯嬰と共に済陽を攻撃し、劉邦軍の主力として李由軍を打破するのに成功しました。この成功により彼は一躍名を広め、続く年にも多くの戦績を挙げました。

紀元前207年には、亳の南方及び啓封の北東で秦軍との激戦に臨み、千騎の敵将を討ち取り、さらに57名の首級をあげ、73人の捕虜を得る戦果を上げました。この武勲が認められて爵位を賜り、臨平君と称されました。同年9月には藍田北の戦いでも再び大きな功績を残しました。

高祖元年（紀元前206年）の正月には、漢王の劉邦から建武侯として封じられ、騎都尉に任命され、三秦の平定にも貢献しました。さらに高祖2年（紀元前205年）11月には分隊を指揮して隴西に侵攻し、章平軍を打破して多くの県を平定しました。彼の軍は次々と勝利を収め、戦績を重ねていきました。

戦功と評価

靳歙の名将としての地位は、彼の戦歴により確立されました。紀元前204年、高祖3年には食邑4200戸が賜り、邯鄲を攻略することでその地位をさらに強固なものにしました。彼は最終的に食邑4600戸を受け、信武侯の位をも得ました。彼の戦績は非常に多岐にわたり、合計して自ら挙げた首級は90、捕虜にした数は132人、敵軍を撃破した回数は14回、城を攻略した回数は59回に達しました。彼の戦歴は、その戦いの巧みさと戦略的思考の証とされています。

彼の評価は、歴史家司馬遷による『史記』においても高く、靳歙は劉邦に従い多くの武功を挙げた者の一人として称賛されています。前漢王朝の礎を築くにあたって彼の存在は極めて重要であり、彼の家系もまた、漢王朝において永続的な影響を及ぼしました。後代の歴史家班固も彼を讃える詩を残しています。

靳歙は高后5年（紀元前183年）に死去し、粛侯と称されました。彼の子、靳亭が後を継ぎ侯となったものの、21年後には不正により侯の地位を剥奪されました。このことからも、靳歙の功績とその後の波乱に富む運命が感じられます。彼の歴史は、単なる武将のそれにとどまらず、時代と共に変動する権力の象徴でもありました。

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