韓国広足

韓国広足（からくに の ひろたり、生没年不詳）は、7世紀末から8世紀にかけて活躍した日本の呪術師です。姓は連（むらじ）。物部韓国氏の一族とされています。

事績

物部韓国氏は、古代日本の有力氏族である物部氏から分かれた一族で、祖先である物部塩児が派遣された国にちなんで改姓したと伝えられています。在来の氏族でありながら、外来の知識や技能を学ぶのに適した伝統を持っていたと考えられています。

『続日本紀』によれば、文武天皇3年（699年）5月24日に、呪術者の役小角（えんのおづぬ）が伊豆島へ遠流される事件が起こりました。韓国連広足は、かつて小角を師と仰いでいましたが、後にその才能を妬んだか、あるいは小角の術が悪用されることを危惧したか、妖惑であると讒言したとされています。ただし、この箇所については、讒言したのは広足ではないとする説や、広足が小角を師としたという記述自体が後世の挿入であるとする説も存在します。

『続日本紀』には広足の位階が外従五位下と記されていますが、彼が実際にこの位を授けられたのは天平3年（731年）であり、小角を告発した時点ではもっと低い位であったと考えられます。役小角は修験道の祖として広く知られていますが、確実な歴史的事実としてはこの事件のみが記録されており、他の事績は伝説に包まれています。小角が妖惑とされた事実の有無や内容については不明ですが、「讒言」という評価は、『続日本紀』が編纂された時代よりも後の時代に形成されたものと考えられます。

韓国広足は、『藤氏家伝』の「武智麻呂伝」において、余仁軍（よにんぐん）とともに呪禁の名人として言及されています。また、大宝令の注釈書である『古記』には、「道術符禁は道士の法で今辛国連がこれを行なう」という記述が見られます。この辛国連（からくにのむらじ）は、広足のことであると考えられています。これらの記述から、広足が行っていた呪禁は道教的な要素を含んでいたと推測されています。

天平3年（731年）1月27日、物部韓国広足は外従五位下に叙されました。翌天平4年（732年）10月17日には、典薬頭（てんやくのかみ）に任命されています。典薬寮には、呪禁博士1人、呪禁師2人、呪禁生6人が配属されていたことから、広足は朝廷の呪禁者として活躍し、典薬頭という地位にまで上り詰めたと考えられます。しかし、その後の事績については詳しい記録が残っておらず、不明な点が多いのが現状です。

広足は、物部氏の伝統を受け継ぎつつ、外来の知識や技術を取り入れ、独自の呪術を展開した人物であったと考えられます。彼の事績は、当時の社会における呪術の位置づけや、文化交流の一端を示すものとして注目されます。

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