韓増

韓増（かん ぞう）

韓増は、前漢時代に活躍した人物で、韓王信の曾孫にあたります。彼の生涯は、武帝の時代から宣帝の時代にかけて、前漢王朝に忠実に仕え、軍事と政治の両面で貢献したことで特徴づけられます。

生涯

韓増の出自は、漢王朝の功臣である韓王信に遡ります。彼の父である韓説の子として生まれました。韓増の運命が大きく変わったのは、武帝の後元元年（紀元前88年）のことです。彼の兄である韓興が按道侯の地位を継承していましたが、巫蠱の禍に連座して処刑されました。この時、韓増は武帝の勅命により連座を免れ、新たに龍頟侯に封じられるという幸運に恵まれました。

若くして郎となった韓増は、その後、諸曹侍中光禄大夫という要職を歴任しました。元平元年（紀元前74年）には、前将軍に昇進し、軍事面での才能を発揮し始めます。本始2年（紀元前72年）には、匈奴討伐のための五将軍の一人として、3万騎を率いて出陣しました。この戦いでは、敵兵100人あまりを斬首するという戦果を挙げ、その武勇を示しました。

神爵元年（紀元前61年）には、大司馬衛将軍であった張安世が亡くなった後、韓増がその後任として大司馬車騎将軍・領尚書事に任命されました。この人事は、韓増が長年にわたり高貴な家柄であり、忠臣として三帝に仕えてきたこと、そして朝廷からの厚い信任を得ていたことの証左と言えるでしょう。韓増は、その温和で人にへりくだる性格から、周囲からの人望も厚く、恩寵を失うことはありませんでした。しかし、彼は現状維持を重視するタイプであり、新しい事を積極的に行うことはありませんでした。

五鳳2年（紀元前56年）に韓増は亡くなり、安侯と諡されました。龍頟侯の地位は、彼の息子の思侯韓宝が継承しましたが、韓宝には後継ぎがいなかったため、彼の代で龍頟侯は一旦断絶しました。その後、成帝の時代になって、韓興の子である韓岑が龍頟侯に封じられ、その血筋は子の韓持弓まで続きましたが、王莽の敗北とともに完全に断絶しました。

韓増は、激動の時代を生きた人物でありながら、その温厚な人柄と忠誠心によって、朝廷内での地位を確立し、一族の繁栄を築き上げました。彼の生涯は、前漢時代の政治と社会を理解する上で、重要な事例の一つと言えるでしょう。

参考文献

班固著『漢書』巻16高恵高后文功臣表
班固著『漢書』巻33韓王信伝

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