韓王信

韓王信：初代韓王、その生涯と末路

韓王信（かんおう しん、生年不詳 - 紀元前196年）は、秦末から前漢初期にかけて活躍した武将、政治家です。楚漢戦争の時代に韓王に封じられましたが、その後の不遇な運命は、激動の時代を象徴するものとして語り継がれています。

生い立ちと韓王即位

韓信は、元々戦国時代の韓の王族の末裔でした。しかし、紀元前230年に韓が秦によって滅ぼされると、王族としての地位を失います。秦末の動乱期になると、項梁や張良によって、同じく韓王に擁立された横陽君韓成（彼の族父にあたる）がいました。しかし、韓成は項羽の不興を買い処刑され、代わりに項羽の配下である鄭昌が韓王に据えられます。その後、韓信は張良の推薦により劉邦に仕え、成信侯に封じられ、太尉に任命されます。まもなく、上将軍韓信に降伏した鄭昌に代わって、劉邦によって韓王に封じられました。この時、韓信は劉邦が最初に封じた諸侯王となりました。

劉邦の配下として

韓王信は、劉邦の配下として楚漢戦争に参加し、睢水の戦いなどで功績を挙げます。しかし、楚漢戦争が終結し、劉邦が皇帝となると、韓王信の立場は微妙なものとなっていきます。

匈奴との関係と裏切り

劉邦は、匈奴への備えとして、韓王信を太原郡に移し、そこを韓と改名させます。しかし、間もなく匈奴が領内に侵攻してきます。韓王信は、冒頓単于と休戦交渉を行おうとしますが、この行動が劉邦から裏切り行為と見なされ、疑念を持たれてしまいます。窮地に陥った韓王信はやむなく匈奴に投降し、匈奴の将軍として漢軍と戦うことになります。

悲劇的な最期

韓王信は、匈奴の将軍として漢軍とたびたび交戦しますが、紀元前196年、柴武との戦いに敗れ、太子とともに斬首され、その生涯を閉じます。かつて劉邦に最初に封じられた諸侯王は、異民族の将軍として漢と戦い、最後は討ち取られるという、悲劇的な結末を迎えました。

子孫

韓王信のもう一人の子である韓頽当は許され、文帝に仕えて弓高侯に封じられました。また、武帝の寵臣であった韓嫣・韓説は曾孫にあたります。さらに、曹操に仕え魏の司徒になった韓曁は、その末裔と伝えられています。

史書における記述

司馬遷の『史記』「韓信盧綰列伝」の「韓信」は、韓王信のことを指します（淮陰侯韓信は「淮陰侯列伝」で扱われています）。班固の『漢書』には、「韓王信伝」という呼称が登場します（巻33、魏豹田儋韓王信伝）。

韓王信の生涯は、激動の時代における個人の運命の儚さを示すとともに、漢王朝成立の裏に隠された複雑な人間関係を垣間見せるものとして、歴史に刻まれています。

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