額田坦

額田坦（ぬかた ひろし）

額田坦は、1895年（明治28年）9月5日に生まれ、1976年（昭和51年）9月21日に亡くなった、日本の陸軍軍人です。最終階級は陸軍中将。

生涯

医師である額田篤太の三男として誕生しました。岡山一中、広島陸軍地方幼年学校、中央幼年学校を経て、1917年（大正6年）5月に陸軍士官学校（29期）を卒業。同年12月には歩兵少尉に任官し、歩兵第54連隊に配属されました。その後、1928年（昭和3年）12月には陸軍大学校（40期）を卒業しています。

軍人としてのキャリアでは、歩兵第40連隊中隊長、教育総監部勤務、教育総監部課員、ドイツ駐在、陸軍歩兵学校教官などを歴任しました。1936年（昭和11年）12月には陸軍省人事局課員となり、人事局補任課長、独立歩兵第11連隊長、陸士生徒隊長などを経て、1941年（昭和16年）10月に陸軍少将に昇進しました。

1942年（昭和17年）12月には参謀本部総務部長、その後同第3部長を経て、1945年（昭和20年）2月には最後の陸軍省人事局長に就任し、翌月には陸軍中将に進級しました。ノンフィクション作家の高木喜朗は、額田を東条英機元首相の腹心であった富永恭次中将の子分格と評しています。同年12月に予備役に編入された後、第一復員省業務局長に就任しましたが、1946年（昭和21年）3月には召集解除となりました。1947年（昭和22年）11月28日には公職追放の仮指定を受けています。

戦後、1948年（昭和23年）7月には、南方からの捕虜輸送における虐待（いわゆる「地獄船」事件）に関与した容疑で逮捕され、B級戦犯として裁判にかけられました。裁判では懲役刑の判決を受け、1952年（昭和27年）2月まで巣鴨プリズンに拘留されました。その後、千鳥ケ淵戦没者墓苑奉仕会の理事長を務めています。

栄典

1941年（昭和16年）12月9日には、満州帝国から建国神廟創建記念章を授与されています。

家族・親族

妻は額田淑子で、陸軍中将の石坂善次郎の娘です。娘婿に陸軍少佐の高木秀明がおり、義弟には陸軍少将の松村知勝がいます。実兄弟には、東邦大学の創立者である額田豊と額田晉がいます。

著書

『秘録宇垣一成』 芙蓉書房、1973年。
『陸軍省人事局長の回想』 芙蓉書房、1977年。（『額田坦回想録』は抜粋再編集版）
編『世紀の自決 - 日本帝国の終焉に散った人びと』 芙蓉書房、1968年。
編『世紀の自決 - 日本帝国の終焉に散った人びと』改訂版、芙蓉書房、1975年。
『額田坦回想録』 芙蓉書房出版、1999年。（『陸軍省人事局長の回想』の抜粋再編集版）

『陸軍省人事局長の回想』では、東條英機自殺未遂事件について米軍MP銃撃説となる事実告白を記述していますが、後年、保阪正康らの実証研究により否定され、歴史捏造との批判を受けています。また、インパール作戦での牟田口廉也に対して同情的な見解を示しています。

編著である『世紀の自決 - 日本帝国の終焉に散った人びと』は、敗戦や戦犯裁判などで自決した旧日本軍将兵の遺言や遺書、最後の言動をまとめた書籍であり、額田は自決者の顕彰と日本人の精神史資料とする目的で編纂しました。

脚注

額田坦追悼録編纂会編『追悼額田坦』芙蓉書房、1977年（非売品）。
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
福川秀樹『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年。
* 外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。

額田坦は、陸軍軍人として激動の時代を生き、戦後は戦犯として裁かれるという波乱に満ちた生涯を送りました。その著書からは、当時の軍部の内情や、戦争に対する複雑な思いが垣間見えます。

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