風の歌を聴け (映画)

映画『風の歌を聴け』

1981年に公開された大森一樹監督による日本映画で、村上春樹の同名小説が原作。村上作品初の映画化作品として知られています。

概要

監督の大森一樹は、原作者の村上春樹と同じ芦屋市出身で、中学校の後輩にあたります。当時、大森は『ヒポクラテスたち』で注目を集めており、主人公の設定年齢や村上が原作を執筆した年齢と同じ29歳でした。主要キャストには、ミュージシャンの坂田明や巻上公一が起用され、室井滋の商業映画デビュー作としても知られています。

映像美を評価する声がある一方で、原作の精神を十分に表現できていない、真面目な青春映画になっているといった批評も存在します。しかし、大森監督自身は本作を非常に気に入っており、村上春樹も評価していたと述べています。主演の真行寺君枝も「自身の代表作」と語り、低予算ながら非常に楽しめた撮影だったと回想しています。

村上春樹は、エッセイの中で「もしこの小説を映画化するなら、タイトルバックには『ムーンライト・セレナーデ』が合う」と考えていたことを明かしています。また、大森監督の没後には、映画での実験的な試みや斬新な感覚を評価しつつ、若々しい演出と個性的な俳優たちの起用を称賛しています。主題歌であるザ・ビーチ・ボーイズの「カリフォルニア・ガールズ」の楽曲使用料が制作費を圧迫したというエピソードも有名です。

演出手法

映画の冒頭では、デレク・ハートフィールドの『火星の井戸』の一節が字幕で引用され、大森監督の過去作品と同様の手法が用いられています。終盤のベッドシーンでは、スーパーインポーズで会話が進む演出や、8ミリ映画でのコマ落としなど、ウディ・アレン作品からの影響が見られます。大森監督は、ヌーヴェルヴァーグ、特にゴダールの『男性・女性』を意識して制作したと語っています。

撮影

撮影は兵庫県神戸市と芦屋市で全編ロケが行われ、1981年8月22日にクランクイン、9月10日にクランクアップという強行スケジュールでした。ATG系配給で1982年の正月映画として公開されました。

原作小説との差異

大森監督は、「自身の映画の要素として原作を扱った」と述べており、原作のストーリーに独自の解釈を加えています。例えば、「小指のない女の子」の双子の姉妹や、鼠の恋人を登場させたり、10年後の荒廃した「ジェイズ・バー」を描くなどの変更が見られます。また、原作では鼠は小説家ですが、映画では8ミリ映画を制作する人物に変更されています。ただし、鼠と「僕」の出会いのシーンなど、原作に忠実な部分も存在します。原作の続編である『1973年のピンボール』を意識した場面も含まれています。

原作の時代設定は1970年の8月ですが、映画には原作当時には存在しなかった神戸行き高速バスが登場するなど、時代設定が数年後になっていると考えられます。しかし、新宿騒乱や神戸まつり事件などの描写からは、1970年前後への監督の強い思いが感じられます。ホレス・マッコイの『彼らは廃馬を撃つ』からの引用や、『ベトナムから遠く離れて』のポスターの登場も、同様の意図によるものです。

あらすじ

（あらすじに関する具体的な情報は、提供された情報からは詳細が不明のため省略します）

キャスト

僕 - 小林薫
女 - 真行寺君枝
鼠 - 巻上公一
ジェイ - 坂田明
鼠の女 - 蕭淑美
三番目の女の子 - 室井滋
旅行センター係員 - 広瀬昌助
当り屋・学生風の男 - 狩場勉
当り屋・柄の悪い男 - 古尾谷雅人、西塚肇
精神科の先生 - 黒木和雄
ディスクジョッキー - 阿藤海
声の出演
男 - 野沢那智
女 - 小原乃梨子
警察官 - 玄田哲章
庄司真由美
内田修

スタッフ

監督・脚本 - 大森一樹
原作 - 村上春樹『風の歌を聴け』
製作 - 佐々木史朗
プロデューサー - 佐々木啓
企画 - 多賀祥介
撮影 - 渡辺健治
音楽 - 千野秀一
主題歌 - ザ・ビーチ・ボーイズ「カリフォルニア・ガールズ」
挿入歌 - ヒカシュー「新しい部族」
編集 - 吉田栄子
録音 - 中沢光喜
効果 - 福島音響効果
鼠の映画・原案 - 8ミリ映画「土掘り」（杉山王郎作）
鼠の映画・音楽 - ヒカシュー「新しい部族」「超・少年（インストルメンタル）」
TVの音声 - 『彼らは廃馬を撃つ』（角川文庫版、ホレス・マッコイ著、常盤新平訳）

参考文献

今野雄二「陽炎のメモリ-・メモリ-（「風の歌を聴け」特集）」『キネマ旬報』、827号、1982年、P.84-85
川本三郎「「華麗な虚偽」より「貧弱な真実」（「風の歌を聴け」特集）」『キネマ旬報』、827号、1982年、P.86-87
桂千穂「邦画傑作拾遺集-32-「風の歌を聴け」「近頃なぜかチャ-ルストン」ほか」『シナリオ』、38巻2号、1982年、P.90-92

関連項目

日本アート・シアター・ギルド公開作品の一覧

外部リンク

風の歌を聴け - allcinema
風の歌を聴け - KINENOTE
* Kaze no uta o kike - IMDb（英語）

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