風伝峠

風伝峠：歴史と自然が織りなす古道の魅力

風伝峠（ふうでんとうげ）は、三重県南牟婁郡御浜町と熊野市紀和町の境界に位置する標高257mの峠です。熊野古道伊勢路の一部であり、その歴史と自然の美しさから、世界遺産にも登録されています。峠道は約1.8kmが世界遺産の文化遺産として指定されており、多くの人々が訪れます。

歴史

風伝峠は、古くから熊野街道伊勢路の一部として、熊野灘に面する七里御浜から熊野本宮大社へと続く重要な道でした。また、峠の西麓は、大和国北山地方や吉野地方を結ぶ「北山道」との交点でもあり、交通の要所として栄えました。江戸時代以前から、多くの旅人や参拝者がこの峠を越えたとされています。

昭和初期には自動車が通行できる道路が開削されました。1970年には国道311号に指定され舗装されましたが、1990年に風伝トンネルが開通したことで、主要地方道である三重県道62号御浜紀和線に降格し、交通量は大幅に減少しました。

2004年には、「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として、アスファルト舗装されずに残っていた石畳道などが世界遺産に登録され、再び注目を集めるようになりました。峠には、かつて名物「風伝餅」を販売していた「風伝茶屋」や「法界塔」などの歴史的な遺構も残っています。

自然と気象現象

風伝峠の名前の由来は、「風のよく通るところ」という意味の「風顛」という当て字から来ています。その名の通り、風伝峠は一年を通して風の通り道となっています。

春から夏にかけては、湿った暖かい熊野灘の海風が奈良県南部の北山地方へと吹き込み、秋から冬にかけては大台山系の冷たい風が七里御浜海岸の集落に吹き下ろします。特に、秋から冬にかけて吹く風は「風伝おろし」と呼ばれ、御浜町側の尾呂志集落では、寒風が吹き下ろすことから、地名もこの風に由来すると言われています。

また、風伝峠を越えて雲が流れ出す現象は、この峠ならではの名物です。紀伊山中で湧き上がった雲が、峠の切れ目から熊野灘へと大きな塊のまま流れ出す様子は、圧巻です。海側の気温が高い時期には、雲はすぐに消えてしまうため、この現象が見られるのは秋から春にかけての寒い時期に限られます。この濃霧は、麓の漁師が天候を予測するのに役立てていると言われています。風伝峠の北西にあるツエノ峰からは、この風伝おろしの元となる雲海を一望できます。

周辺の観光スポット

風伝峠周辺には、横垣峠、通り峠、丸山千枚田、紀州鉱山跡（鉱山資料館）、湯ノ口温泉など、多くの観光スポットがあります。これらのスポットと風伝峠を組み合わせて訪れる人が多く、自然と歴史を満喫できるエリアとして人気です。

アクセス

風伝峠へは、三重県道62号御浜紀和線を通ってアクセスできます。かつての国道311号の旧道であり、現在は静かな峠道となっています。ハイキングコースとしても人気があり、徒歩で峠を越えることもできます。熊野古道伊勢路の一部として、歴史を感じながら自然の中を歩くことができます。

まとめ

風伝峠は、歴史と自然が豊かに残る魅力的な場所です。熊野古道の歴史を感じながら、独特の気象現象や美しい風景を楽しめます。周辺の観光スポットと合わせて、ゆっくりと時間をかけて訪れてみてください。

参考文献
小倉肇『県政だよりみえ「三重再発見」総集編 伊勢から熊野へ 再生を願う巡礼の道 東熊野街道』三重県政策広聴広報課、平成12年3月、20,21頁。
佐々木節、石野哲也、伊藤もずく 著、松井謙介編 編『絶景ドライブ100選［新装版］』学研パブリッシング〈GAKKEN MOOK〉、2015年9月30日。ISBN 978-4-05-610907-8。
『みんなであるこう 熊野古道』三重県地域振興課、平成11年6月、17頁。

外部リンク
風伝峠（熊野古道伊勢路）-東紀州地域振興公社
風伝峠マップ（御浜町役場公式サイト内）
みえ東紀州 熊野古道伊勢路：横垣峠・風伝峠コース（東紀州ほっとネットくまどこサイト内）
* 熊野古道語り部友の会

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