馬奈木敬信

馬奈木敬信

馬奈木敬信（まなき たかのぶ）は、1894年（明治27年）に福岡県で生まれ、1979年（昭和54年）に85歳で亡くなった日本の陸軍軍人です。最終階級は陸軍中将。

生い立ちと初期の軍歴

農業を営む馬奈木夘一郎の六男として生まれた馬奈木は、修猷館中学校、熊本陸軍地方幼年学校、中央幼年学校を経て、1916年（大正5年）に陸軍士官学校を卒業しました。卒業後、歩兵少尉に任官し、歩兵第13連隊に配属されました。その後、独立守備第6大隊などを経て、1924年（大正13年）には陸軍大学校を卒業。

参謀本部での活動と国家革新論

1925年（大正14年）に参謀本部付勤務となり、ドイツ班、ドイツ大使館付武官補佐官などを歴任。1931年（昭和6年）には歩兵少佐に昇進し、参謀本部員に就任しました。この時期、馬奈木は国家革新論を支持し、十月事件にも関与しています。その後、歩兵第50連隊大隊長、陸軍大学校教官を経て、1935年（昭和10年）に歩兵中佐に進級し、再び参謀本部員となりました。南方出張、参謀本部付、ベルリン駐在（諜報）を経験し、1938年（昭和13年）には歩兵大佐に昇進しています。

ドイツとの関係

馬奈木はドイツとの関係が深く、参謀本部時代には駐日ドイツ大使館に頻繁に通い、ドイツ大使のヘルベルト・フォン・ディルクセンや駐在武官のオイゲン・オットと親交を深めました。一方で、リヒャルト・ゾルゲからは「陸軍省の情報源」として名が挙げられています。

二・二六事件への関与

1936年（昭和11年）の二・二六事件では、戒厳司令部発足に伴い戒厳参謀に任命されました。事件後、磯部浅一の獄中告発書や匂坂春平の裁判資料に名前が載るなど、事件関係者からも注目されました。NHKの調査により、事件当時のドイツ大使館からの電話傍受記録が発見され、馬奈木が事件に関与していた可能性が指摘されました。馬奈木自身は、通話の人物は自分ではないとしながらも、ドイツ班の将校の可能性を示唆しました。また、事件前から陸軍内部で日独防共協定の秘密交渉をしていたこと、事件発生時にドイツ大使館に出入りして事件の詳細を説明したことなどを証言しています。

日中戦争と太平洋戦争

1939年（昭和14年）にオランダ公使館付武官となり、1940年（昭和15年）には歩兵第79連隊長として日中戦争に出征。その後、北支那方面軍司令部付、陸軍省軍務局付（タイ・仏印国境画定委員）を歴任し、1941年（昭和16年）に陸軍少将に進級。翌月、第25軍参謀副長兼軍政部長に就任し、太平洋戦争を迎えました。

マレー作戦、シンガポールの戦いに参加。1942年（昭和17年）にはボルネオ守備軍参謀長となり、1944年（昭和19年）に同軍が第37軍と改称した後も引き続き参謀長を務めました。1945年（昭和20年）には陸軍中将に進み、第2師団長として仏印の守備を担当し、終戦を迎えました。

戦後

1948年（昭和23年）に公職追放仮指定を受けましたが、1950年（昭和25年）に復員しました。戦後は、日本金鵄連合会会長やボルネオ守備軍の独立歩兵第367大隊戦友会「ボルネオ会」会長を務めました。

1979年（昭和54年）、肺がんにより85歳で生涯を閉じました。


馬奈木敬信は、激動の時代を生き、陸軍中将まで昇りつめた軍人でした。二・二六事件や太平洋戦争など、歴史的な出来事にも深く関わった人物として、その名は記憶されるべきでしょう。

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