馬相の乱

馬相の乱

馬相の乱（ばそうのらん）は、後漢末期の188年に益州で発生した反乱を指します。この反乱自体は短期間で鎮圧されましたが、その後に赴任した益州牧・劉焉の動きによって、益州における自立への道が探られました。

背景

184年に発生した黄巾の乱は、指導者・張角の死によって急速な勢いを失いましたが、残党の活動は決して終息を迎えることはありませんでした。黄巾の残党による暴動は続き、その影響の一環として、并州の刺史・張懿が郭太に暗殺される悲劇も引き起こされました。このような状況が続く中、益州では当時の刺史である郤倹（郤正の祖父）が重税を徴収し、民間からの不満が強まっていました。その結果、郤倹は朝廷の命により逮捕され、次に劉焉が派遣されることになります。

しかし、劉焉が赴任する前に益州では黄巾軍の残党を名乗る者たちが反乱を起こしました。馬相と趙祇という二人は、郤倹を殺害し、雒城を占拠して以降、綿竹や蜀郡、建為の3つの郡で騒動を巻き起こしました。最終的には馬相が巴郡の太守をも手にかけ、自ら天子を名乗るに至りますが、彼は益州従事の賈龍によって命を落としました。

劉焉の益州入り

劉焉は漢の皇族であり、益州出身の学者・董扶から「益州には天子の気がある」という助言を受けていました。これを信じた劉焉は、皇帝の霊帝に対して「清廉な重臣を選び、軍権を持つ州牧に任じるべきだ」と提案し、188年に郤倹の更迭を受けて益州牧に任命されました。彼はすぐさま賈龍に迎えられ、益州に到着しました。

劉焉の独立構想

益州に着任した劉焉は、南陽や三輔の地域から乱を避けて移住してきた民の中から数万人を選び出し、彼の指導のもと「東州兵」と名付けます。この軍事力を背景にして、劉焉は綿竹を拠点にし、現地の有力者たちを恩恵を持って説得し、次第に彼らの支持を集めました。また、中央政府からの独立を目指す計画も持っており、中央と益州を結ぶ漢中郡には五斗米道の教祖・張魯を派遣しました。この地域は彼の父、張修が黄巾の乱で反乱を起こした場所であり、多くの信者が住んでいました。

張魯は漢中郡の太守を攻撃し征服することで、その地域を支配下に置き、蜀と中央との交通を絶つことに成功します。その後、劉焉は懐柔策から強硬な方針に転換し、反抗する豪族たちを処刑しました。これにより、益州内部の勢力均衡が変化し、ついには賈龍に対しても反乱の疑いをかけ、命を奪ってしまいます。

劉焉の失敗とその後

劉焉は董卓の暗殺後の混乱を利用して、当時長安にいた献帝を襲撃しようとしましたが、李傕率いる勢力に大敗を喫します。この戦闘では、劉焉の二人の息子が命を落とすという悲劇もありました。その後、194年に劉焉は失意のうちに亡くなり、彼の四男・劉璋が後を継ぐことになりました。劉璋の時代には、服従していた張魯が独立を目指して行動を始め、劉璋との対立が激化しました。

このように、馬相の乱はただの反乱に留まらず、その後の益州の歴史に深い影響を及ぼす出来事となりました。

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