魏驥

魏驥（ぎ き）

魏驥は、明代に活躍した官僚です。1374年に生まれ、1471年に98歳で亡くなるまで、激動の時代を生き抜きました。字は仲房、号は南斎と称しました。紹興府蕭山県を本貫とし、その生涯は学問と官僚としての職務に捧げられました。

生涯

魏驥は、魏希哲の子としてこの世に生を受けました。1406年、進士試験に合格し、松江府訓導という教育者の職に就きました。この地で、彼は夜遅くまで学生たちのために茶粥を用意し、彼らを励ましたと伝えられています。その熱意に触発され、多くの学生たちが学業を成就させることができたと言われています。

その後、魏驥は南京に召喚され、『永楽大典』の編纂事業に参加しました。この巨大な百科事典の編纂という大事業を終えた後、再び松江府へと戻りました。1419年には、吏部尚書の師逵の推薦により、太常寺博士に任じられました。

1426年、魏驥は吏部考功員外郎へと昇進し、1433年には南京太常寺少卿に転任しました。1438年には北京に呼び戻され、行在吏部左侍郎として試用されました。翌1439年、正式に吏部左侍郎に任命され、その手腕を発揮しました。彼は、北京近郊で発生した蝗害の跡を視察し、民衆の苦境を深く理解しようと努めました。1443年、礼部左侍郎に転任しましたが、高齢を理由に辞任を願い出ました。しかし、吏部尚書の王直は、魏驥の能力はまだ衰えていないとして、多忙な職務から落ち着いた職務に移すべきと進言しました。その結果、魏驥は南京吏部左侍郎に転任しましたが、再び辞任を願い出ても許可はされませんでした。

当時の権力者であった宦官の王振は、皇帝の寵愛を背景に権勢を誇っていましたが、魏驥のことは尊敬し、「先生」と呼んだと伝えられています。1449年、魏驥は南京吏部尚書に昇進しました。同年、土木の変が起こり、英宗が捕虜となると、魏驥は他の官僚たちを率いて、当面の急務を箇条書きにして上奏し、その多くが実行に移されました。

1450年、魏驥はついに引退を許され、故郷の蕭山に隠居しました。しかし、彼は故郷の治水問題にも関心を払い、螺山、石巌、畢公の堤防と堰を修築することを提唱しました。

1471年、魏驥は98歳という長寿を全うし、その生涯を閉じました。諡号は文靖と贈られました。著書には、『南斎前後集』20巻と『魏文靖摘稿』10巻があります。子には魏完がいました。

人物像

魏驥は、教育者としての熱意、官僚としての卓越した能力、そして民衆への深い同情心を持った人物でした。その幅広い知識と経験は、多くの人々に影響を与え、彼の業績は後世にまで語り継がれています。

参考文献

『明史』巻158 列伝第46
吏部尚書文靖魏公墓誌銘（徐紘『明名臣琬琰録』巻9所収）

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