魯昌

魯昌（ろ しょう、生没年不詳）は、五胡十六国時代の前燕に仕えた人物であり、代郡の出身です。

生涯において、彼は鮮卑慕容部の大人である慕容廆（ぼようかい）に仕え、313年には裴嶷（はいぎょく）、陽耽（ようたん）、黄泓（こうおう）らと共に謀主に任じられました。この役職は、慕容廆の政治や軍事における重要な相談役を意味し、彼の政権運営において中心的な役割を担いました。

彼は征虜将軍にも任じられ、軍事面でも活躍しました。当時の晋王司馬睿（しばえい）は、慕容廆を龍驤将軍（りゅうじょうしょうぐん）・都督遼左雑夷流民諸軍事（ととくりょうさぞういりゅうみんしょぐんじ）・大単于（だいえんう）に任じ、昌黎公（しょうりこう）に封じようとしました。しかし、慕容廆はこれを受けませんでした。

この時、魯昌は慕容廆に対し、「今、洛陽と長安の両京は陥落し、天子は難を避けており、琅邪王（司馬睿）が江東で承制して、かろうじて四海は繋がっています。明公（慕容廆）は一方の雄と言えども、諸部では我らに服さない者がいるのは、官位が王命によるものではないからです。使いを出して琅邪王に大統の継承を勧め、その後、詔令を奉じて罪ある者らを討つのに従わぬ者がいましょうか」と説きました。これは、司馬睿に正式な皇帝位を継承させ、その権威を利用して周辺諸部を従わせるという戦略的な提案でした。

慕容廆はこの魯昌の進言に従い、建康（建業）へ勧進の使者を派遣しました。この行動は、慕容部が司馬睿の政権を支持する姿勢を示すとともに、その権威を利用して自らの勢力拡大を図るという意図がありました。この勧進は、後の前燕の建国、そして五胡十六国時代の政治情勢に大きな影響を与えることになります。

しかし、これ以後の魯昌の事績は、史書には詳しく記されていません。彼の生涯における詳細は不明な点が多いですが、慕容廆の初期の政権運営において重要な役割を果たし、その後の前燕の基礎を築いた功績は評価されるべきでしょう。

彼の進言がなければ、慕容部は周辺諸部をまとめ上げ、勢力を拡大することは難しかったかもしれません。魯昌は、政治的な洞察力と戦略的な思考力に優れた人物であり、その功績は歴史に深く刻まれています。

参考文献

『晋書』巻108
『資治通鑑』巻88、巻90
* 『十六国春秋』巻23

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