鳥居原狐塚古墳

鳥居原狐塚古墳は、山梨県市川三郷町大塚に位置する円墳で、市川三郷町の指定史跡となっています。この古墳は、曽根丘陵の西端に位置し、標高約320メートルの場所に築かれています。この地域は、東海地方の弥生文化や畿内の古墳文化の影響を受けており、周辺には大塚古墳や伊勢塚古墳などが点在しています。

古墳は開墾によって大きく破壊されていますが、1894年（明治27年）の調査で石室が確認され、昭和初期には仁科義男による詳細な調査も行われました。古墳の内部構造は、割石を小口積みした竪穴式石室で、内部には朱が塗布されていたことがわかっています。埴輪は確認されていません。1979年（昭和54年）には発掘調査が実施され、その結果、仿製内行花文鏡、舶載の神獣鏡（赤烏元年銘鏡）、滑石製の臼玉、鉄刀、鉄剣、銅鈴、土師器片、須恵器の破片など、多数の副葬品が出土しました。

特に注目されるのは、赤烏元年（238年）銘を持つ神獣鏡です。この鏡は、直径12.5センチ[[メートル]]の紀年銘鏡で、大陸南部の呉の年号が刻まれています。日本列島では、弥生時代から青銅製品が威信材として大陸から移入されていましたが、この鏡は呉と倭国間の外交関係、あるいは公孫氏を介した通交によってもたらされた可能性が指摘されています。当時、遼東半島地域を支配していた公孫氏は、魏と敵対しながらも呉と外交関係を持っていました。鏡に刻まれた赤烏元年には、公孫氏が魏と高句麗の攻撃によって滅亡しており、当時の東アジア情勢を反映する重要な資料です。『魏志倭人伝』には、この翌年に邪馬台国の女王卑弥呼が魏に朝貢し、親魏倭王の称号を授与されたと記述されており、この鏡は当時の国際関係を理解する上で非常に重要な意味を持っています。

現在、この赤烏元年銘神獣鏡は、国の重要文化財に指定されており、市川三郷町の一宮浅間神社に所蔵され、東京国立博物館に寄託されています。また、狐塚古墳自体も市川三郷町の指定史跡として保護されており、その歴史的価値が評価されています。古墳の調査によって、当時の人々の生活や文化、国際交流について多くのことが明らかになり、古代史研究において非常に重要な場所となっています。

関連する場所としては、周辺の大塚古墳群や曽根丘陵、そして安倉高塚古墳などが挙げられます。これらの場所もまた、地域の歴史を語る上で重要な役割を担っています。

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