鳥木弥生

鳥木弥生 - メゾソプラノ歌手

1974年3月27日生まれ、石川県七尾市出身の日本のメゾソプラノ歌手。所属事務所はオフィス諷雅。親しみやすい人柄から「トリッキー」「やよちゃん」「やよやよ」といった愛称で呼ばれることも本人が認めている。

人物

石川県七尾市に三姉妹の末っ子として生まれる。身長は170センチで、姉妹の中では最も小柄だという。すぐ上の姉は元アナウンサーの鳥木千鶴である。幼い頃は白馬に乗った王子様か魔女になることを夢見ていたという鳥木氏は、読むことと書くことが好きで、一時は小説家や漫画家を目指したこともあった。音楽との関わりは、七尾市立御祓中学校でブラスバンド部に所属し、石川県立金沢辰巳丘高校ではオーケストラ部でホルンを演奏していたことに始まる。しかし、歌うこと自体は幼少期から得意であり、最初にレパートリーとした曲は松村和子の「帰ってこいよ」だったという。

洗足学園音楽大学で声楽・オペラを教えており、後進の指導にもあたっている。

来歴

音楽大学在学中、鳥木氏は江古田の商店街でロシア出身の著名なメゾソプラノ歌手、エレナ・オブラスツォワに声をかけられたことがキャリアの大きな転機となる。大学卒業後の1998年、オブラスツォワの招きにより東欧およびロシアでの演奏活動を開始。旧ユーゴスラビア（現セルビア共和国）のベオグラード音楽院ホールにて、オブラスツォワとのジョイントリサイタルでプロデビューを飾った。この公演はその後、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニアなどでも行われた。同年、第3回石川県新人登竜門コンサート（現・北陸新人登竜門コンサート）に合格し、オーケストラ・アンサンブル金沢および指揮者の岩城宏之氏との共演を果たす。

1999年にはイタリアへ渡り、フィレンツェでイタリアのメゾソプラノ歌手フェドーラ・バルビエーリに師事。2000年にはシエナのキジアーナ音楽院夏季マスタークラスにてアメリカのメゾソプラノ歌手シャーリー・ヴァーレットに学ぶなど、研鑽を積んだ。2001年にはフィレンツェ五月音楽祭劇場オペラ研修所のオーディションに合格し、バリトン歌手アレッサンドロ・コルベッリやメゾソプラノ歌手ベルナデッテ・マンカ・ディ・ニッサらに師事。2002年、同劇場でのプッチーニ作曲「ジャンニ・スキッキ」公演にて、ツィータ役でオペラデビューを果たした。主演はローランド・パネライだった。

2003年にはフィレンツェのペルゴラ劇場でストラヴィンスキー作曲「プルチネッラ」を、2004年にはルッカ近郊ピストイアでプッチーニ作曲「外套」のフルーゴラ役を演じるなど、イタリアのトスカーナ地方を中心に活動を展開。師の一人であったフェドーラ・バルビエーリの逝去を機に、テノール歌手ウィリアム・マッテウッツィやコレペティトゥアのジャニーヌ・ライスに師事し、活動拠点をトスカーナからピエモンテに移した。

2007年春、フランスのクレルモン＝フェランにてビゼー作曲「ジャミレ」のタイトルロールを歌い、フランスデビュー。同年秋には文化庁の新進芸術家派遣制度を利用してパリへ移住し、翌2008年にエコールノルマル音楽院オペラ芸術科のディプロマを最高位で取得した。

国内外でのキャリアを通じて、ロッシーニ作曲「ランスへの旅」のメリベア公爵夫人、「セヴィリアの理髪師」のロジーナ、「タンクレディ」のイザウラ（指揮アルベルト・ゼッダ）、レオンカヴァッロ作曲「ラ・ボエーム」のムゼッタ（日本初演）、プーランク作曲「カルメル会修道女との対話」のメール・マリー（指揮アラン・ギンガル）、ヴェルディ作曲「イル・トロヴァトーレ」のアズチェーナ、「ファルスタッフ」のメグ、ビゼー作曲「カルメン」のタイトルロールおよびメルセデス、チャイコフスキー作曲「エウゲニ・オネーギン」のオリガなど、幅広い役柄を歌っている。また、ベートーヴェン作曲「第九」やヴェルディ作曲「レクイエム」といった合唱付きの主要作品や、ファリャ作曲「恋は魔術師」、フォーレ作曲「ペレアスとメリザンド」などのオーケストラ付き声楽曲でも、オーケストラ・アンサンブル金沢、読売交響楽団、東京交響楽団といった日本の主要オーケストラや著名な指揮者と数多く共演している。

2008年にはスペイン、バルセロナ近郊のファランドラ劇場やカタルーニャ地方の複数劇場でプッチーニ作曲「蝶々夫人」のスズキ役を演じ、スペインデビューを果たした。日本人メゾソプラノとして得意役と思われての依頼であったが、この時が実はスズキ役のデビューだった。2016年の同プロダクション再演時にもスズキ役で招聘され、全10公演に出演している。2017年には、東京芸術劇場シアターオペラvol.10/全国共同制作プロジェクトとして上演された、演出家笈田ヨシ氏によるプッチーニ作曲「蝶々夫人」で、日本国内でのスズキ役全幕デビューを飾った。以降、このスズキ役とビゼー作曲「カルメン」のタイトルロールは、メゾソプラノ歌手としての鳥木氏のキャリアを代表する役柄となっている。

2018年には新国立劇場2018-19シーズン公演のヴェルディ作曲「ファルスタッフ」にメグ役で出演。同年、「メゾソプラノ地位向上委員会」を立ち上げ、メゾソプラノの地位向上を目指す活動を開始した。2019年には新国立劇場2019-20シーズンのチャイコフスキー作曲「エウゲニ・オネーギン」にオリガ役で出演。同年10月、東京芸術劇場コンサートオペラvol.7にて、自身としては12年ぶりとなるビゼー作曲「ジャミレ」のタイトルロール（日本初演）を務めた。2020年にはソプラノ歌手の森谷真理氏と「ゲキジョウシマイ」を結成し、ユニットとしての活動も展開している。2021年にはソプラノ歌手の百々あずさ氏、コレペティートルの小埜寺美樹氏と共に、3人の頭文字を取った「DOTオペラ」をプロデュース団体として立ち上げ、オペラ公演やコンサートの主催も行っている。

その他の活動

演奏活動に加えて、自身の主催・出演する公演の解説や字幕作成、音楽専門ウェブマガジンONTOMOでの連載「鳥木弥生の歌曲で解決！恋愛お悩み相談室」をはじめとする音楽コラムの執筆、翻訳など、多岐にわたる執筆・翻訳家としても活動している。

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