鹿島則文

鹿島則文（かしま のりぶみ）：激動の時代を生きた神職

鹿島則文は、天保10年（1839年）に鹿島神宮大宮司・鹿島則孝の長男として生まれました。幼少より学問に励み、安井息軒に儒学を学んでいます。号は桜宇。

尊皇攘夷運動と八丈島への遠島

文久3年（1863年）、鹿島則文は尊皇攘夷を唱える水戸藩士が集う文武館に土地を提供し交流を深めます。しかし、この行動が問題視され、慶応元年（1865年）に八丈島へ遠島となりました。

明治維新後の活躍

明治2年（1869年）に赦免され帰郷すると、鹿島神領会所の建物を学問所「稽照館」としました。明治6年（1873年）には鹿島神宮大宮司に就任し、明治11年（1878年）には日比谷神道事務局に勤務、明治15年（1882年）には皇典講究所委員を命じられます。

明治17年（1884年）には神宮大宮司に任じられ、祭儀の復興に尽力する傍ら、林崎文庫の整備、神宮皇學館（皇學館大学の前身）の拡充に尽力しました。また、『古事類苑』の編纂を皇典講究所から引き継ぎ、完成・出版に導くなど、文化事業にも貢献しました。

しかし、明治31年（1898年）に内宮が炎上した責任を取り辞職、鹿島へ帰ります。明治34年（1901年）10月10日、63歳で病没し、茨城県鹿島郡鹿島町三笠山墓地に埋葬されました。

蔵書家としての一面と桜山文庫

鹿島則文は愛書家としても知られ、「用ヲ節シ費ヲ省キ、書ヲ求メテ息マズ、飢ル者ノ食ヲ求ムルガ如シ」という言葉が残されています。蔵書は「桜山文庫」と名付けられ、珍しい書物や貴重な写本など約3万冊を所蔵していたと言われています。

桜山文庫には井関隆子の日記も含まれていました。蔵書の多くは深沢秋男の尽力により、現在では昭和女子大学図書館に収蔵されています（江戸期の写本や刊本を中心に約6900冊）。

家族

長男：鹿島則泰 - 則文の後を継ぎ鹿島神宮大宮司を務めましたが、後に辞職し帝国図書館に奉職しました。則文同様、和漢古書の蒐集、目録編纂等にあたっています。
次男：鹿島敏夫 - 則泰の後を継ぎ鹿島神宮大宮司を務めました。鹿島神宮宮司の鹿島則良、写真家の渡辺典博は敏夫の孫にあたります。
長女：赤堀三子 - 則泰の東京大学文学部附属古典講習科の同期生である赤堀又次郎の妻。
三男：鹿島桜巷 - 本名「淑男」。報知新聞記者、明治大正期の流行作家。

栄典

1901年（明治34年）5月13日 - 従四位

著書

鹿島則文『南遊雑録』
鹿島則文『八丈八景帖』
鹿島則文 編『南島名勝集』


鹿島則文は、激動の幕末から明治維新という時代において、神職として、また文化人として多岐にわたる功績を残しました。その精神と業績は、今もなお語り継がれています。

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