麻績御厨

麻績御厨（おみのみくりや）の歴史と背景

麻績御厨は、現在の長野県麻績村および筑北村が位置する信濃国筑摩郡にあたる地域に存在していた伊勢神宮の御厨です。この地域は、筑北盆地、特に麻績川流域に広がっていました。御厨とは、古代日本における神社のための領地や農地を指し、ここでは伊勢神宮のために管理されていました。

平安時代の設立

麻績御厨は平安時代に設立され、特に嘉承年間に記された「皇大神宮建久巳下古文書」にその名が見られることからも、その重要性がうかがえます。この時期、伊勢神宮の本家は伊勢平氏、そして内宮が所管していました。しかし、保元2年（1157年）には、保元の乱で反逆者となった平正弘の財産が没収され、麻績御厨も信濃国の土地として再編されることとなります。

鎌倉時代への移行

鎌倉時代に入ると、『吾妻鏡』に記載されるように、再び伊勢神宮のものとなります。特に文治2年（1186年）には後白河法皇から源頼朝に対して伊勢神宮の所領としての確認が行われます。この時期、地域の領主として各地の豪族が派遣され、麻績御厨は他の土地とのつながりが強められました。

伊賀氏との関連

貞応3年（1224年）には、伊賀光宗が伊賀氏事件の失敗を受けてこの地に配流され、その後も地域の歴史に影響を与えました。永仁2年（1294年）には更に伊賀頼泰が所領を譲渡し、室町時代には口入神主の荒木田氏がこの地を私有するようになります。

戦国時代とその後

戦国時代に入ると、麻績御厨は武田氏の支配下に入り、青柳頼長の所領となります。天正9年（1581年）には内宮御師の宇治久家が訪れ、地域の信仰の重要性が再確認される出来事がありました。これにより、麻績御厨は長い歴史を持ちながらも、時代に応じた変遷を経験してきた場であったことがわかります。

経済と文化

麻績御厨の経済活動について、『神鳳鈔』の記録には詳細が残されています。それによれば、御厨は本家である内宮への様々な神供物として、「鮭150隻、同児1桶、搗栗1斗、干棗1斗」などを納入していました。さらに、内宮禰宜にも口入料として複数の布地や鮭を負担する義務があったことが示されています。

麻績神明宮と地域社会

麻績御厨を代表する神社は麻績神明宮であり、御厨が退転した後も地域住民は神明宮の祭祀や造営活動に貢献してきました。特に、十日市場は神明宮の門前に形成され、地域の活動の中心地となったことが考えられています。

麻績御厨は、信仰の中心地としてだけでなく、地域経済や文化にも深い影響を持つ存在だったのです。今後もその歴史を学び、地域の重要な資源として保護していくことが望まれます。

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