黄尊素

黄尊素（こう そんそ）

黄尊素は、明代末期の官僚であり、東林七賢の一人として名を馳せました。字は真長、号は白安といい、紹興府余姚県を本貫としました。彼はその短い生涯の中で、官僚としての職務を全うし、不正を暴き、国政の改革を訴え続けました。

生涯

1584年に生まれた黄尊素は、1616年に進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。最初に任じられた寧国府推官の職では、その精密かつ迅速な仕事ぶりで周囲を驚かせました。彼は持ち前の粘り強さで難題を次々と解決し、その有能さを証明しました。

1622年には御史に抜擢されましたが、一旦帰郷します。しかし、翌年の冬には再び朝廷に戻り、その直後から積極的な活動を開始しました。彼は、余懋衡、曹于汴、劉宗周、周洪謨、王紀、鄒元標、馮従吾といった有能な官僚の召還を求めると同時に、尚書の趙秉忠、侍郎の牛応元、通政の丁啓睿の無能ぶりを弾劾しました。この弾劾により、趙秉忠と牛応元は官を辞することとなりました。

また、山東で発生した白蓮教の乱（徐鴻儒の乱）の鎮圧後も、残党が再起した際には、山東巡撫の王惟倹の不手際を厳しく批判しました。黄尊素は、辺境での経験豊富な人物を巡撫に任用するよう進言し、軍事についても度々上奏しました。彼は大将の馬世龍を批判し、枢輔の孫承宗の意に反する行動も取りました。さらに、当時の皇帝である天啓帝が在位中に一度も大臣と面会していなかったことを問題視し、別殿での召見を求めるなど、国政のあり方についても積極的に意見を述べました。

1624年、北京で大風や地震といった天災が相次ぐと、黄尊素は天譴論に基づいて、皇帝の失政を批判する上疏を行いました。この上疏は、天啓帝の側近である司礼太監の魏忠賢の怒りを買い、彼を廷杖に処そうとしましたが、韓爌の弁護により、俸給一年分の剥奪で済みました。

さらに、楊漣が魏忠賢の罪を弾劾した際には、黄尊素も魏忠賢を批判する上疏を提出し、彼を「毒虫」とまで表現しました。その後も、万燝が廷杖により死亡した際には、彼を忠臣として旧官に戻すよう請願し、魏忠賢の独断専行に徹底的に抵抗しました。

1625年、黄尊素は陝西の茶と馬の視察を命じられましたが、北京を出たところで閹党の曹欽程によって弾劾され、官籍を削られてしまいます。翌年、逮捕命令が出され、蘇州まで使者が来ましたが、公文書の不備により黄尊素のもとには届きませんでした。しかし、彼は自ら囚人服を着て出頭しました。

彼は、錦衣衛の許顕純らによって不正な財産を隠匿していたという濡れ衣を着せられ、苛烈な拷問を受けました。その結果、1626年の閏6月1日に獄中で死去しました。享年43歳という若さでした。

死後、彼の功績は認められ、1628年には太僕寺卿の位が追贈され、南[[明]]の福王政権下では忠端と追諡されました。彼の著作には、『隆万列卿記』や『黄尊素文集』などがあります。

子女

黄尊素には、三人の息子がいました。長男は黄宗羲、次男は黄宗炎、三男は黄宗会です。

黄宗羲は、明末清初を代表する思想家として知られています。
黄宗炎は、『周易象辞』などの著作を残しました。
* 黄宗会は、『縮斎文集』の著者として知られています。

黄尊素の生涯は、その正義感と不屈の精神を象徴するものであり、後世に大きな影響を与えました。

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