黒田荘

黒田荘（くろだのしょう）について

黒田荘は、三重県名張市に位置していた東大寺領の荘園であり、伊賀国名張郡に存在していました。この荘園は、天平勝宝7年（755年）に孝謙天皇から東大寺に寄進された杣（そま）の一部で始まり、次第にその存在感を増していきました。

荘園の成立と発展

黒田荘の基礎となる部分は、寄進された板蠅杣（いたばえのそま）です。その後、地域の四至を名張川から笠間川に拡張し、長元7年（1034年）には国司によって正式にその範囲が確認されました。さらに、長暦2年（1038年）には、杣内の見作田6町180歩が公に認められ、住人たちには臨時雑役免除が付与され、荘園としての体制が整備されました。

村人の抵抗と国司との対立

黒田荘は、その後も荘民による公田の耕作により官物の納入を拒み続け、東大寺の荘園拡大に対抗しました。これに対し、国司側は藤原実遠が所有していた土地の一部が東大寺のものとなったことで危機感を抱き、黒田荘を攻撃する事態に至ります。天喜元年（1053年）からの三年間にわたる戦闘の結果、官宣旨によって宇陀川・名張川の西側に地域が限定され、黒田本荘が形成されました。この事件は、一部の利害調整が行われる契機ともなり、重要な歴史的な意味を持つものでした。

荘民支配と政治的影響

その後、東大寺は預所制を導入し、名主層との関係を強化していきます。保元2年（1157年）には初代預所の僧侶・覚仁が現地に下向し、大江氏と協力して支配体制を確立しました。その結果、承安4年（1174年）には、地域一円の289町2段余りが東大寺の支配下にあることが正式に認められ、荘民は寺院の奴隷的存在として位置づけられました。

鎌倉時代の変化

しかし、鎌倉時代に入ると、黒田荘に武士階級の影響が広がり、支配体制の弱体化が見込まれるようになります。特に、大江氏が主要な役職を独占し、年貢の抑留を試みたことから、東大寺は鎌倉幕府に助けを求め、対抗を図ります。この時期、荘民の一部は大江氏に共鳴し、黒田悪党と呼ばれて抵抗運動を展開しました。

荘園の衰退

その後、室町時代にはさらに名主層の自立が進行し、東大寺の影響力は薄れることになります。応安2年（1369年）には、黒田悪党が一度は再起するも最終的には制圧され、荘園支配は徐々に崩壊していくこととなりました。嘉吉元年（1441年）や戦国時代の永禄3年（1560年）には、年貢納入の記録があるものの、室町時代後期には荘園支配はほぼ解体に向かっていたと考えられています。

研究の意義

黒田荘に関する多くの文献や史料が『東大寺文書』などに残されており、これによって歴史学者たちの研究対象として重要な位置づけを持っています。研究者たちは荘園の成り立ちや悪党との関係を探求し、多くの論文や著作を発表しています。これにより、黒田荘は日本の荘園制度の中でも重要な存在であることが再認識されています。

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