黒田記代

黒田記代：戦前・戦後の映画界を彩った女優の軌跡

黒田記代（くろだ きよ、1916年2月17日-2004年）は、日本の映画史にその名を刻んだ女優です。北海道札幌市に生まれ、幼少期を過ごした後、東京に移住。1934年、満18歳で松竹蒲田撮影所に入社し、映画界にデビューしました。

デビュー作は清水宏監督のサウンド版『恋を知りそめ申し候』。主役の相手役として抜擢された彼女は、同撮影所で他の6人の女優と共に「蒲田ラッキー・セブン」として売り出されました。しかし、黒田記代はその後、日活多摩川撮影所へと移籍します。

日活では、近代的な容貌を生かし、『芸者三代記 大正篇』などの現代劇で主演を務め、注目を集めました。内田吐夢監督の『人生劇場・青春編』、熊谷久虎監督の『情熱の詩人琢木』『蒼氓』といった文芸作品にも主演し、幅広い演技力を披露。また、日活京都撮影所へ貸し出されることもあり、『忠臣蔵』シリーズにも出演するなど、時代劇にも挑戦しました。

1939年には、新興キネマ東京撮影所に移籍。戦時統合による新興キネマの合併、大映設立後も同社に所属し続けました。しかし、1943年には大映を退社し、舞台へと転向。加賀邦男の新文藝座に参加し、戦後も数々の舞台作品に出演しました。

戦後は、映画への出演も継続。『幾山河』『見ないで頂戴お月さま』といった作品に出演しています。彼女のフィルモグラフィは多岐に渡り、松竹、日活、新興キネマ、大映と、多くの映画会社で活躍したことがわかります。

黒田記代のキャリアは、日本の映画界の変遷と深く関わっています。サイレント映画からトーキー映画へ、そして戦時下の映画制作、戦後の映画界の再建といった激動の時代を生き抜き、女優として確固たる地位を築きました。彼女の出演作品は、時代背景や映画史を理解する上で貴重な資料となっています。

主な出演作品

松竹蒲田撮影所
『恋を知りそめ申し候』（1934年）
『祇園囃子』（1934年）
日活多摩川撮影所
『芸者三代記 大正篇』（1934年）
『人生劇場 青春篇』（1936年）
『情熱の詩人琢木』（1936年）
『蒼氓』（1937年）
『忠臣蔵 天の巻・地の巻|忠臣蔵_天の巻・地の巻』（1938年）
新興キネマ東京撮影所
『父は九段の桜花』（1939年）
『熱情の翼』（1940年）
『北極光』（1941年）
大映
『香港攻略 英國崩るゝの日』（1942年）
『我が家の風』（1943年）
フリーランス
『幾山河』（1946年）
* 『見ないで頂戴お月さま』（1954年）

彼女の演技は、現代劇における洗練された表現力、そして時代劇における風格ある佇まいなど、多様な魅力に溢れていました。黒田記代の活躍は、戦前・戦後の日本の映画史において重要な位置を占めており、その功績は現在も高く評価されています。残された映像資料や記録を紐解き、彼女の輝かしいキャリアを改めて振り返ることは、日本の映画文化を考える上で非常に有益です。多くの作品が失われたとされますが、現存する作品から黒田記代の才能を垣間見ることができるでしょう。また、彼女が舞台女優としても活躍した事実も、彼女の多才ぶりを示す重要な証左と言えるでしょう。 黒田記代に関する資料は、キネマ旬報社発行の「日本映画俳優全集」や「日本映画人名事典」などに収録されています。これらの資料は、黒田記代の人生とキャリアを深く理解する上で貴重な情報源となるでしょう。

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