鼻疽

鼻疽（びそ、glanders）

鼻疽は、鼻疽菌（Burkholderia mallei）によって発症する感染症で、主に馬やロバ、ラバに関連していますが、犬や猫、羊、山羊も感染する可能性があります。鼻疽菌はヒトにも感染することがあり、このため人獣共通感染症に分類されています。

感染の背景

日本では鼻疽の発生が確認されていませんが、海外からの侵入のリスクが懸念されています。この病気は家畜伝染病予防法に基づき法定伝染病とされており、その対象動物は特に馬です。感染症の形態としては、肺鼻疽、鼻腔鼻疽、皮疽などがあり、臨床症状により分類されます。

病原体とその感染経路

鼻疽はグラム陰性無芽胞桿菌である鼻疽菌によって引き起こされます。この病原体は、東欧やアジア、アフリカなどで報告されていますが、日本での発生例はありません。感染は飛沫や経口から人間に伝播し、馬同士の直接的または間接的な接触を通じて広がります。また、感染は経口、経気道、経皮、創傷などのさまざまな方法で起こる可能性があります。病原体は外的環境（土壌など）では生存できないため、感染を引き起こす主な手段は、感染した動物との接触や、その分泌物との接触です。

症状について

ヒトにおける症状

潜伏期間は通常1〜14日とされ、まれに数年を要することもあります。初期症状としては発熱や頭痛が見られ、その後に肺炎や膿胸が進展することがあります。重篤な場合、敗血症性ショックを引き起こすこともあるため、注意が必要です。

馬における症状

馬では、発熱や血様の膿性鼻汁が観察され、潰瘍や喀血の症状が出ることがあります。また、リンパ管に沿った乾酪化結節や膿瘍が形成されることが特徴です。

診断方法

鼻疽の診断には、グリセリンまたは血液を添加した培地を使用して菌を分離・同定する方法が最も信頼性が高いとされています。ストラウス反応やマレイン反応も有用であり、その他の抗体検査法としてCF反応、ELISA、凝集反応等が用いられます。鑑別が必要な病気としては、炭疽や類丹毒、天然痘、梅毒などがあります。

治療法

ヒトに対する治療には、サルファダイアジンやテトラサイクリン、セフタジジム、イミペネムが効果的ですが、未治療の場合は致死率が非常に高くなる可能性があります。馬に対しては、感染が確認されると通常は治療を行わず、殺処分されることが一般的です。

予防策

残念ながら、ヒト用のワクチンは存在しません。感染を予防するためには、輸入動物の厳格な検疫が不可欠です。また、常在地での馬や患者との接触を避けること、感染が確認された場合には馬を殺処分することが予防につながります。

日本においては、鼻疽の感染が未だ確認されていないため、引き続き注意を払うことが必要です。

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