龍造寺胤栄

龍造寺胤栄（りゅうぞうじ たねみつ）

龍造寺胤栄は、戦国時代の武将であり、肥前国の戦国大名である龍造寺氏の18代当主です。大永4年（1524年）に、龍造寺氏17代当主・龍造寺胤久の子として生まれました。

生涯

父の胤久と同様に、水ケ江龍造寺氏の龍造寺家兼の補佐を受けましたが、実質的には家兼の傀儡に近い立場でした。そのため、後に家兼と対立し、一時的に大内氏のもとに亡命することとなります。しかし、天文14年（1545年）に龍造寺氏の一族の多くが殺害されるという事件が発生すると、事態は急変します。天文15年（1546年）、胤栄は家兼に協力し、共に馬場頼周を討ちました。この出来事は、胤栄が単なる傀儡ではなく、武将としての能力も持ち合わせていることを示す出来事でした。

天文16年（1547年）には、大内義隆によって肥前の代官に任じられるなど、大内氏からも重用されました。しかし、その翌年の天文17年（1548年）に、胤栄は病のため亡くなってしまいます。胤栄には嗣子がいなかったため、龍造寺一族で協議が行われ、その結果、分家である水ケ江龍造寺氏から家兼の曾孫にあたる胤信（後の龍造寺隆信）が本家の家督を継承することになりました。

しかし、この家督継承には不満を持つ家臣も少なくなく、天文20年（1551年）には、龍造寺鑑兼を担いだ胤栄の旧臣である土橋栄益らによる内紛が勃発しました。この内紛は、胤栄の死後も龍造寺氏が安定しなかったことを示しています。

胤栄の未亡人（龍造寺家門の娘）は、その後、隆信に再嫁しました。また、娘の於安は小田政光の嫡子・鎮光に嫁ぎましたが、鎮光が龍造寺隆信に背いたために謀殺されると、波多親に再嫁しました。このように、胤栄の血縁者たちは、彼の死後も波乱に満ちた人生を送ることとなりました。

偏諱を受けた人物

土橋栄益（つちはし みつます）：家臣
納富栄房（のうとみ みつふさ）：家臣、納富石見守、法名：道周、納富則貞の子で、納富信景の父

脚注

川副博『日本の武将45 龍造寺隆信』（人物往来社、1967年）110-117頁
『北肥戦誌』


龍造寺胤栄は、その短い生涯の中で、龍造寺氏の当主として、また武将として、複雑な状況の中で生きた人物でした。彼の死後、龍造寺氏は大きな転換期を迎え、隆信の登場によって大きく発展することとなります。しかし、胤栄の時代も、龍造寺氏の歴史において重要な位置を占めていると言えるでしょう。

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