後藤貴明

後藤貴明とは

後藤貴明（ごとう たかあきら / たかあき）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、肥前後藤氏の第19代当主（武雄領主）です。大村純前の庶子として生まれましたが、後に後藤氏の養子となりました。

肥前後藤氏の歴史

肥前後藤氏は、藤原利仁を祖とする一族で、平安時代末期から代々武雄の地を領していました。この地は、もともと橘公業が前九年の役での戦功により与えられたものですが、後に後藤氏が所領することとなりました。

波乱の経歴

大村氏から後藤氏へ

貴明は、大村純前の庶子として生まれましたが、大村氏の家督が有馬晴純の子である純忠に決まったことで、天文14年（1545年）に後藤氏へ養子に出されました。この決定には、大村氏家臣団の一部が反発し、純忠のキリスト教への入信もあって、貴明を支持する者が多くいました。そのため、貴明は純忠と度々対立し、ルイス・フロイスの『フロイス日本史』にも、大村氏と敵対する「後藤殿」として頻繁に登場します。永禄3年（1560年）、実子がいなかった貴明は、平戸城主の松浦隆信から惟明を養子に迎えています。

大村氏、有馬氏、龍造寺氏との戦い

永禄3年（1560年）9月、貴明は、潮見城（武雄市橘町永島）を奪還し、その後も須古城（白石町堤）を攻めるなど、各地で戦いを繰り広げました。永禄4年（1561年）には塩田（嬉野市塩田町）の原直景を降伏させ、永禄5年（1562年）には大友宗麟と同盟を結びました。

永禄6年（1563年）には、大村氏の家臣団と連携してクーデターを企て、大村氏の平定を試みましたが失敗。その後、針尾島を攻め落とし、佐世保、日宇、早岐、針尾島の四ヶ村を領土としました。この際、横瀬浦奉行の針尾伊賀守とともに、大村純忠がポルトガルに提供した横瀬浦港を焼き討ちしました。同年7月には、龍造寺隆信が武雄に迫ったため和議を結びますが、その後、須古城の平井経治を攻めるも失敗。逆に経治の娘を養子・惟明の妻として迎え同盟を結びました。

永禄7年（1564年）には、龍造寺軍を攻撃し、平戸の松浦氏や諫早の西郷氏と共謀して大村方の彼杵城を攻め落としました。その後も、有馬・大村連合軍を撃退するなど、各地で激しい戦いを繰り広げました。元亀元年（1570年）には、大友宗麟の龍造寺隆信攻めに協力しましたが、鍋島直茂の奇襲により大友軍は敗退しました（今山の戦い）。

元亀3年（1572年）には、松浦氏や西郷氏と連携して、大村純忠の居城である三城を包囲しましたが、攻略には至りませんでした。

龍造寺氏の支配下へ

今山の戦いの後も、龍造寺氏との戦いが続きましたが、天正2年（1574年）には養子・惟明が反旗を翻したため、龍造寺隆信に救援を求め、惟明を制圧しました。この時、貴明は実子の晴明を人質として龍造寺氏に差し出しました。

しかし、天正3年（1575年）には隆信との和議が破綻し、天正4年（1576年）には隆信が貴明の居城である塚崎城を焼き払いました。天正5年（1577年）に再度和議が成立し、隆信の三男である家信を貴明の養子とすることで、隆信の支配下に入らざるを得なくなりました。天正6年（1578年）には、貴明は隆信に従い大村に出陣し、大村純忠を降伏させました。

貴明は天正11年に死去し、沖田畷の戦いで隆信が戦死する1年前のことでした。

死後

死後5年目の天正16年（1588年）には木像が作られ、武雄市貴明寺に伝えられています。この木像は、当初白色主体の彩色が施されていましたが、平成22年度の修復で古色仕上げに戻され、当初の武将としての威厳を取り戻しました。

後藤貴明は、戦国時代の激動の中で、自らの領地を守り抜き、大名たちと激しく戦った武将でした。その生涯は、当時の武士の生き様を象徴するものであり、後世に大きな影響を与えました。

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