1762年5月31日の海戦

1762年5月31日の海戦：イギリス艦によるスペイン艦拿捕の顛末

1762年5月31日、七年戦争中の英西戦争において、スペインのカディス沖で小規模ながらも重要な海戦が発生しました。イギリスのフリゲート艦アクティブ（艦長：ハーバート・ソーヤー）とスループ艦フェイヴァリット（艦長：フィルモン・ポウノル）が、スペインのフリゲート艦エルミオーンを拿捕したのです。この海戦が特筆されるのは、エルミオーンの積荷が莫大な金銀であり、イギリス艦が獲得した戦利品の中でも記録的な価値を誇った点にあります。

海戦の背景

開戦から4ヶ月後、イギリスはスペインを海上封鎖しました。その目的は、スペインによるカリブ海への増援を阻止し、ハバナの戦いを有利に進めること、そしてスペインがジブラルタルや地中海で軍事行動を起こすのを防ぐことにありました。

戦闘の経過

1762年5月15日、アクティブとフェイヴァリットは、スペイン沿岸のカディス沖を航行中、スペインのフリゲート艦エルミオーンを発見しました。エルミオーンは、フアン・デ・サバレタ大尉が率いる26門のフリゲート艦でした。

エルミオーンは1月6日にリマ西方のカヤオを出港しましたが、当時はまだ英西戦争の宣戦布告が行われていませんでした。そのため、乗組員は開戦を知らなかった可能性が高く、5月15日朝にアクティブとフェイヴァリットを発見した際も、戦闘準備は緩慢でした。10時になってようやく乗員の配置を調整し、砲手用の道を整備した程度でした。大砲は準備されておらず、火薬の格納箱への通路も散乱したままでした。

13時、アクティブとフェイヴァリットは回頭し、エルミオーンに接近しました。15時、砲兵指揮官のフランシスコ・サビエル・モラレス・デ・ロス・リオスは、サバレタに戦闘配置を命じるよう要請しましたが、サバレタは不可解にも晩餐後の17時までこれを拒否しました。

アクティブとフェイヴァリットはエルミオーンに接近し、数回の砲撃を行いました。エルミオーンが舷側砲を放つと、イギリス両艦も応戦しました。しかし、エルミオーンはすぐにマストのほとんどを破壊され、ミズンマストのみが残りました。これにより、エルミオーンは身動きが取れなくなり、降伏を余儀なくされました。

スペイン士官の間に混乱と誤解があったため、エルミオーンは舷側砲をわずか2回しか撃てませんでした。サバレタは降伏の印として軍艦旗を降ろす際、イギリス艦隊がエルミオーンをフランスのフリゲート艦と誤認していると主張しましたが、モラレスは砲撃を続けようとしました。また、イギリス兵がエルミオーンに乗り込んできた際、サバレタは他の士官の同意を得ずに降伏しました。

戦いの後

イギリスはエルミオーンを拿捕しましたが、その積荷を見て、ようやくエルミオーンが普通のフリゲート艦ではないことに気づきました。エルミオーンはカディスへ帰る途中で、積荷にはドル、金貨、金と銀の地金、カカオ、スズの塊などが大量に積まれていました。

エルミオーンはイギリス船に護衛されてジブラルタルまで運ばれ、戦利品として接収されました。積荷と船体の価値は、当時の価格で519,705ポンド10シリング（2016年の7千万ポンド相当）でした。ソーヤーとポウノルは艦長としてそれぞれ64,872ポンド（2016年の873万ポンド相当）を受け取り、下級水兵も給料30年分の480ドルを受け取りました。この価値は2008年時点でも最高記録です。

戦利品を獲得したソーヤーとポウノルは、一夜にして巨万の富を得ました。ポウノルはアッシュプリングトンのシャーパム葡萄園を購入し、ロバート・テイラー設計の家とランスロット・ブラウン設計の庭園を建設しました。また、ジョシュア・レノルズに肖像画を描かせました。

一方、スペインに戻ったサバレタは、ゲレーロの船上で軍法会議にかけられ、死刑を宣告されました。後にカルロス3世によって減刑され、海軍から免職となり、10年の禁固刑に服しました。サバレタは釈放の代わりにフリゲート艦再建のための資金を出すことを求めましたが、聞き入れられませんでした。モラレスは海軍から2年間の停職処分を受け、その間はジーベックで働きました。また、士官のルカス・ガルベスは1年間の停職処分を受けました。

関連項目

七年戦争下のイギリス

参考文献

Clowes, William Laird. (2003). The Royal Navy: v. 3: A History - From the Earliest Times to 1900. Chatham Publishing. ISBN 978-1861760128

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