1923年の航空

1923年の航空界：技術革新と産業の胎動

1923年は、航空技術の進化と商業的な発展が著しい、航空史における重要な節目となりました。

企業設立と産業基盤の強化

この年には、今日の航空業界を牽引する礎となる企業の設立が相次ぎました。ヘリコプター開発で知られるシコルスキー・エアクラフト社がアメリカで産声を上げました。また、国際的な航空輸送の幕開けを告げるかのように、ベルギーではサベナ・ベルギー航空が、ロシアではドブロフロート（後のアエロフロート）が設立されています。ドイツでは、ハインリヒ・フォッケらが「ブレーマー航空機製造株式会社」を設立し、これが後にフォッケウルフ社へと改称されることになります。

技術的な飛躍と記録への挑戦

革新的な航空技術の進展も目覚ましいものでした。スペインの技術者フアン・デ・ラ・シエルバは、開発を進めていた回転翼機オートジャイロの試作4号機で初飛行に成功し、この独創的な航空機の可能性を示しました。

ヘリコプター開発においても重要な記録が樹立されています。フランスのエティエンヌ・ウーミシェンは、国際航空連盟が公認する初めてのヘリコプターによる距離飛行として、358メートルの飛行を達成しました。さらに、アルゼンチン出身の発明家ラウル・パテラス・ペスカラも、同軸二重反転ローターを持つヘリコプターで86メートルの飛行を行い、その後、継続時間を4分13秒まで伸ばす成功を収めています。

固定翼機による長距離飛行や新たな技術も開発されました。アメリカ陸軍のオークリー・G・ケリー中尉とジョン・A・マクレディー中尉は、ニューヨークからロサンゼルスまでの無着陸飛行を初めて成功させ、大陸横断飛行の可能性を実証しました。また、ローウェル・スミスとジョン・リヒターは、飛行中の航空機への空中給油という画期的な技術を成功させ、航空機の航続距離を飛躍的に伸ばす道を開きました。

珍しい試みとしては、アメリカで開発されたガーハート サイクルプレーンという人力飛行機が初飛行しました。自動車で牽引されて離陸した後、短時間ながら安定した水平飛行を達成しています。

ソビエト連邦では、初の単葉戦闘機となるポリカルポフ I-1の原型機が初飛行しました。また、飛行船では、初のヘリウムガス充填による大型飛行船シェナンドーが飛行を開始しています。

日本国内の動向

日本国内でも航空の導入と発展が進みました。朝日新聞社主催の東西定期航空会が、大阪と東京を結ぶ定期郵便飛行を開始しています。しかし、この定期航空では吹雪による墜落事故が発生し、民間定期航空における最初の犠牲者が出てしまうという悲劇も起こりました。

また、航空母艦への着艦技術も確立されつつありました。2月にはウイリアム・ジョルダン大尉が航空母艦「鳳翔」への着艦に成功。続く3月には、吉良俊一大尉が日本人として初めて同艦への着艦を成功させています。

インフラ整備と競技会

航空交通を支えるインフラ整備も進み、ドイツのベルリン・テンペルホーフ国際空港が開港しました。これは、主要都市に近代的な空港が整備され始めた時代を象徴する出来事です。

国際的な航空レースも行われ、水上機の速度を競うシュナイダー・トロフィー・レースがイギリスのワイト島で開催されました。このレースでは、アメリカのディビッド・リッテンハウスがカーチス CR-3を操縦し、平均速度285.5 km/hで優勝しました。

航空界の功労者たち

この年の航空界の発展に貢献した人々が各国の飛行クラブから表彰されています。

フランス飛行クラブ大賞: ルイ・ブレゲー、ピエール＝ジョルジュ・ラテコーエル、デュドネ・コスト
イギリス飛行クラブ金賞: S.F. McClean

1923年は、多様な技術の進歩、商業航空の基礎構築、そして重要なインフラの誕生が見られた、現代航空への道筋がより明確になった一年と言えるでしょう。

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