1927年の航空

1927年は、航空が単なる移動手段から、国境を越える大いなる挑戦と冒険の舞台へと飛躍した、記憶に残る一年となりました。この年、世界はパイロットたちの勇敢な試みに熱狂し、空の可能性は大きく広がりました。

最も注目を集めたのは、なんといっても大西洋横断飛行への挑戦です。中でも、5月20日から21日にかけてチャールズ・リンドバーグが単葉機「スピリットオブセントルイス」号で成し遂げた、ニューヨークからパリへの単独・無着陸飛行の成功は、航空史における金字塔となりました。約33時間半に及ぶこの偉業は、世界中の人々に夢と希望を与え、航空技術の信頼性を広く知らしめました。

しかし、大西洋は多くの挑戦者にとって厳しい壁でした。リンドバーグの成功の直前、5月8日にはフランスのシャルル・ナンジェッセとフランソワ・コリが「白鳥号」でパリからニューヨークを目指し飛び立ちましたが、行方不明となっています。リンドバーグの成功後も、6月下旬にはリチャード・バードらがニューヨークからパリへ向かうも、濃霧のためにノルマンディー沖へ不時着水を余儀なくされました。また、イギリスのアン・サヴィルやアメリカのフランシス・グレーソンといった女性飛行士、女優のルース・エルダーらも大西洋横断飛行に挑みましたが、機体のトラブルや悪天候により、成功に至らなかったり、消息を絶ったりする悲劇も発生しました。

一方で、南大西洋では成功例も生まれました。4月にはブラジル人のジョアン・リベイロ・デ・バロスらが水上機「ジャウー号」で、10月にはフランスのデュドネ・コストとジョゼフ・ルブリがブレゲー19で、それぞれ大陸間無着陸飛行を達成しています。

冒険だけでなく、この年は商業航空の発展にとっても重要な年でした。1月には後のユナイテッド航空となるボーイング航空輸送が、シカゴとサンフランシスコを結ぶ航空郵便輸送のために設立されました。3月にはパンアメリカン航空が、フロリダ州キーウエストとキューバのハバナを結ぶ郵便路線を開設しました。南米ブラジルではシンジカト・コンドル航空（後のクルゼイロ航空）が、スペインではイベリア航空が運航を開始するなど、世界の各地で航空輸送会社が誕生・活動開始しました。

技術面でも進展が見られました。カナダ人のウォーレンス・ターンブルは、可変ピッチプロペラ搭載機による初の飛行試験に成功しました。ドイツではヨハネス・ヴィンクラーらによってドイツ宇宙旅行協会（VfR）が設立され、未来の宇宙開発に向けた動きが始まります。また、アメリカでは航空機メーカーのセスナが創業しました。

軍事面では、フランス初の航空母艦であるベアルンが就役しました。レースの世界では、シュナイダー・トロフィー・レースが開催され、イギリスのスーパーマリン S.5が当時の記録となる高速飛行を披露しました。

日本においても、今井小松が女性として二番目に航空操縦士免許を取得するという出来事がありました。しかし、日本海軍の第六航空船が暴風で不時着するなど、航空黎明期ならではの困難も伴いました。

長距離飛行への挑戦は続き、イギリス空軍のロデリック・カーはイギリスからインドを目指しましたが不時着しました。バート・ヒンクラーはイギリスからラトヴィアまでの無着陸飛行を成功させました。アメリカ陸軍のフォッカーC-2は、アメリカ本土からハワイまでの飛行を達成しました。

この年の偉大な功績に対し、フランス飛行クラブ大賞やハーモン・トロフィーなどがチャールズ・リンドバーグに贈られるなど、その活躍は広く称えられました。

1927年は、人類が空を制覇しようとする情熱と、それを支える技術が急速に進歩した年であり、その後の航空時代の幕開けを告げる重要な出来事が数多く刻まれました。

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