1933年の航空

1933年の航空史



1933年は、航空技術の進歩とパイロットたちの飽くなき探求心によって、数々の歴史的な快挙が成し遂げられた記念すべき年となりました。大西洋無着陸横断飛行の成功、初の単独世界一周、そして各種記録の樹立など、多岐にわたる出来事が航空史に新たな1ページを刻みました。

大西洋横断と長距離飛行の挑戦



この年、大西洋を舞台にした飛行は特に注目を集めました。1月16日、フランスのジャン・メルモーズを含むチームがセネガルからブラジルへの南大西洋無着陸横断飛行に成功。17時間27分という短時間での達成は、当時の航空技術の進化を示すものでした。続く2月6日から9日にかけては、ジム・モリソンがイギリスを出発し、セネガルを経てブラジルへ飛行。これにより、北大西洋と南大西洋の両方を無着陸で横断した初のパイロットとなりました。

長距離飛行の世界記録も更新されました。2月6日から8日には、オズワルド・ゲイフォードとG.E.ニコレッツがフェアリー長距離単葉機を使用し、イギリスのクランウェル基地から南西アフリカのウォルヴィス湾まで8,540kmを飛行し、新記録を樹立しました。さらに8月5日から7日には、モーリス・ロッシとポール・コードがブレリオ110に搭乗し、ニューヨークからシリアまで9,104kmを飛び、この記録を塗り替えました。

小型機による大西洋横断も試みられました。5月7日から8日にかけ、ポーランドのスタニスラフ・スコルジンスキーは単座のRWD-5bisでセネガルからブラジルまでの約3,582kmを飛行。これは当時、大西洋を横断した最小の航空機による快挙でした。

初の単独世界一周飛行と探検



1933年の最も特筆すべき出来事の一つは、ウィリー・ポストによる初の単独世界一周飛行の達成です。7月14日から22日にかけて、彼はロッキード・ヴェガを操縦し、ニューヨークを出発点としてベルリンモスクワイルクーツク、アラスカを経由し、再びニューヨークへと帰還しました。約25,100kmの行程をわずか8日間弱で飛び切ったこの偉業は、単独での長距離飛行の可能性を大きく広げるものでした。

また、航空機は探検にも活用されました。11月16日、探鉱家ジミー・エンジェルは、飛行機での鉱脈探査中に南米ギアナ高地にある世界最大級の滝を発見。この滝は後に彼の名にちなんでエンジェルフォールと名付けられました。

女性パイロットたちの活躍



この年は、女性パイロットたちの活躍も目立ちました。ロトフィア・エルナジはエジプト人女性として初めてパイロット免許を取得し、カイロとアレクサンドリア間を飛行。フランスのマリーズ・イルズはパリ-サイゴン間の長距離飛行に挑戦しました。南米でも、カロリーナ・ロレンシーニがアルゼンチン初の女性民間パイロットとして免許を取得しました。しかし、朝鮮半島出身の女性飛行士、朴敬元は8月7日に羽田から満州への単独飛行に挑むも、静岡県の山中に墜落し、その生涯を終えました。

記録への挑戦と技術の進歩



速度記録、高度記録も次々と更新されました。4月10日、イタリアのフランチェスコ・アジェロはマッキ M.C.72で682km/hという水上機の速度記録を樹立。9月28日には、フランスのグスターブ・ルモワンがポテーズ50で13,661mの飛行高度記録を樹立しました。気球による高度記録も更新され、11月20日にはトーマス・G・W・セトルらが18,665mに到達し、国際航空連盟(FAI)に認定されました。また、ソ連の成層圏気球USSR-1も19,000mの飛行を行っています。

技術面では、4月12日にアメリカで蒸気エンジンを動力とする航空機ベスラー・スチーム・エアプレーンが飛行するというユニークな試みも行われました。

組織の設立と軍事航空



国家レベルでの航空体制の整備も進みました。4月1日にはインド空軍が創立。4月29日にはナチス時代のドイツに、航空開発・生産を統括するドイツ航空省が設立されました。軍事面では、アメリカ海軍初の、最初から航空母艦として設計されたレンジャーが2月25日に進水。また、9月7日から8日には、海軍のコンソリデーテッド P2Y飛行艇6機がヴァージニア州からパナマ運河まで3,314kmの無着陸編隊飛行に成功しました。コロンビア・ペルー戦争では、2月14日にペルー空軍がコロンビア艦隊への爆撃を行っています。9月には、後のエドワーズ空軍基地となるミューロック陸軍飛行場が開設されました。

民間航空の発展と事故



民間航空においては、国際的な再編が進みました。10月31日には、フランスの複数の航空会社が統合され、エール・フランスが設立されました。ブラジルでは11月4日にVASP航空がサンパウロ州の州立航空会社として運航を開始しました。一方で、民間航空機の安全性に関わる重大な事件も発生しています。10月10日、ユナイテッド航空ボーイング247がアメリカ民間航空史上初の航空テロ事件により墜落しました(ユナイテッド航空機チェスタートン爆破事件)。

この他にも、4月4日にはアメリカ合衆国の飛行船アクロンがニューイングランド沖で墜落し、乗員76名が死亡するという飛行船史上最悪の死亡事故が発生しました。9月3日には、イタリアのフランチェスコ・デ・ピネードがベランカ単葉機での離陸に失敗し、機体炎上により亡くなるという痛ましい事故も起きています。

1933年は、冒険、技術革新、そして組織化が同時進行した、航空史における活気あふれる一年でした。多くのパイロットや技術者が限界に挑み、その功績はハーモン・トロフィーやFAIゴールド・エア・メダルといった賞によって称えられました。これらの出来事は、その後の航空の発展に大きな影響を与えることになります。

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