1950年の日本競馬

1950年（昭和25年）の日本競馬は、戦後混乱期を経て、復興への道を歩みつつある社会情勢を映し、様々な変化と発展が見られた一年でした。

新たな競馬場の誕生と運営の変化

この年、各地で新たな競馬場が誕生または再開しました。1月には川崎競馬場が完成し、平塚や横浜の市営競馬がそこで開催され、盛況を博しました。4月には大井競馬場も竣工し、5月に初開催。年内に市町村から委託された競馬が10回行われ、約8億7千万円の売上を記録するなど、南関東地区における公営競馬の拠点として歩み始めました。また、8月には船橋競馬場が初めての開催を迎え、これも公営競馬の発展に寄与しました。その他、高知県の桟橋競馬場が再開し、福岡県には八幡競馬場、福島県には若松競馬場が新たに開設されました。一方で、高知県の長浜競馬場はこの年に廃止されています。

中央競馬においては、4月の中山および京都開催から、勝馬判定のためのフォトチャートカメラが導入され、判定の正確性向上に一役買いました。5月からは、馬資源の減少に対応する一環として、京都開催で毎日最終レースとして速歩競走が行われるようになりました。また、9月には国営競馬で連勝複式馬券の発売が一時中止されましたが、これにより入場者数が激減したため、わずか1ヶ月後の10月には発売が再開されるという出来事もありました。

法律改正と将来への布石

競馬に関する法律面でも重要な動きがありました。7月には国営競馬の実施規則が改正され、一度地方競馬へ移籍するために登録を抹消した3歳馬でも、再び国営競馬で競走することが可能になりました。10月には東京都の各特別区が独自に競馬を開催するための特別区競馬組合が設立され、公営競馬の運営体制が強化されました。年末には、競馬の控除率をそれまでの37%から25%へ引き下げる競馬法の一部改正案が国会で可決、施行されました。これはファンにとって大きなメリットであり、競馬人気の一層の向上につながる改正でした。さらに、中京地区に国営競馬場を新設するという競馬法改正案も通過し、中京競馬場建設に向けた動きが本格化しました。

また、中山競馬場ではコース改修のため、近隣用地の買収が進められ、2000メートル競走を新設する準備が進められました。この年の4月には、千葉地方検察庁から競馬法改正を巡る問題に関連して開催中止を求められる一幕もありましたが、話し合いの結果、無事に開催は継続されました。

主要な競走結果

この年のクラシック戦線では、クモノハナが特に輝きを放ちました。第10回皐月賞を制したクモノハナは、6月11日に東京競馬場で行われた第17回東京優駿（日本ダービー）に橋本輝雄騎手とのコンビで出走。この年のダービーは26頭という空前の多頭数で争われましたが、その激戦を制し二冠を達成しました。その他のクラシックレースでは、桜花賞をトサミツル、優駿牝馬（オークス）をコマミノル、菊花賞をハイレコードがそれぞれ優勝しています。

古馬の最高峰である天皇賞は、春の第21回が京都競馬場で開催され、オーエンスが優勝。秋の第22回は東京競馬場で行われ、ヤシマドオターが勝利を収めました。障害競走では、5月の中山大障害（春）をエイシヤインが、12月の中山大障害（秋）をアシガラヤマが制しています。

この年に生まれ、あるいは競馬界を去った人々

1950年には、後に競馬界で活躍する多くの人物や競走馬が誕生しました。競走馬では、1953年のクラシック戦線を賑わせることになるハクリヨウやボストニアン、ホウセントなどが生まれています。人物では、後の名騎手や名調教師となる、岡崎伸吉、河野通文、上野清章、西橋豊治、中島敏文、佐藤賢二、蓑田早人、松田国英、押田年郎、田所秀孝、湯窪幸雄、橋本壽正、石坂正、星野忍といった方々がこの年に生を受けています。

一方で、競馬界に貢献した布施季三調教師や、元騎手で調教師としても活躍した吉野庄三郎氏がこの年に亡くなりました。

1950年は、競馬場インフラの整備、運営システムの近代化、法改正によるファンサービスの向上など、戦後の日本競馬がその基盤を固め、将来への重要なステップを踏み出した一年と言えるでしょう。

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