1958年の日本公開映画

1958年（昭和33年）は、日本における映画公開が非常に活発だった年として記録されています。この一年間に国内で劇場公開された作品群は、日本映画だけで実に537本に達し、これに加えて世界各国から多数の作品が紹介されました。文字通り、観客は豊富な選択肢の中から好みの映画を選ぶことができた、豊かな時代だったと言えるでしょう。

年間を通じて多様な日本映画が公開されました。例えば、新年早々にはサラリーマンコメディの定番となるシリーズ第一作社長三代記や、時代劇柳生武芸帳 双龍秘劔が登場。春先には、石原裕次郎主演の都会派アクション錆びたナイフや、歌謡曲を題材にした別れの波止場などが公開されました。文学作品の映画化も盛んで、松本清張原作のサスペンス張込みや、田宮二郎主演の氷壁などが公開され、話題を呼びました。また、日本映画を代表する巨匠たちの作品もこの年に公開されています。稲垣浩監督によるヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞作無法松の一生、市川崑監督の炎上、小津安二郎監督が初のカラー作品として手がけた彼岸花などが公開され、その芸術性の高さで注目を集めました。商業映画としては、川島雄三監督の巨人と玩具が当時の映画界の内幕を描いてヒットし、特撮ファンには東宝の怪獣映画大怪獣バランが、アニメーションファンには日本初の長編カラーアニメーション映画白蛇伝が公開されたことも特筆すべき点です。年末には、黒澤明監督の娯楽時代劇大作隠し砦の三悪人が登場し、大きな話題となりました。この他にも、文芸作品からコメディ、サスペンス、時代劇、さらにはシリーズものや子供向け作品まで、幅広いジャンルの日本映画が生み出されました。

一方、外国映画も質・量ともに充実していました。特にアメリカ映画が多く、セシル・B・デミル監督の旧約聖書叙事詩十戒のようなスペクタクル大作、ビリー・ワイルダー監督の法廷サスペンス情婦、アルフレッド・ヒッチコック監督の心理サスペンス傑作めまいといった名作が公開され、日本の映画ファンに強い印象を与えました。また、戦争映画も多く、眼下の敵や深く静かに潜航せよなどが公開されています。イギリスからはホラー映画の代表格吸血鬼ドラキュラが登場し、後に続くホラーブームの端緒となりました。フランスからは、ヌーヴェルヴァーグの到来を予感させるルイ・マル監督の死刑台のエレベーターや、ジャック・タチ監督の独特なコメディぼくの伯父さんが公開され、新しい映画表現に関心を持つ観客に歓迎されました。イタリアやポーランドなど、他のヨーロッパ諸国の作品も紹介され、日本のスクリーンは国際色豊かでした。

このように1958年は、日本映画の年間公開本数が非常に多かっただけでなく、国内外の多彩な作品が次々と封切られた、まさに映画黄金期とも呼べる時代の活力を感じさせる一年でした。観客は映画館に頻繁に足を運び、様々な物語や世界に触れる機会を得ていたのです。これらの作品は、当時の日本の社会や文化を映し出す鏡であると共に、後世に語り継がれる名作も多く含まれています。

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