1962年の日本公開映画

1962年に日本で公開された映画

1962年（昭和37年）は、日本の映画界において多種多様な作品が劇場公開された活気ある一年でした。この項目では、この年に日本国内で商業公開された映画作品群について、その概要と主な動向を解説します。

昭和37年の元旦である1月1日から、年の瀬迫る12月31日までの間に封切られた作品は、日本映画だけでも399本にのぼりました。これに加えて、世界各国の映画も多数紹介され、日本の観客は幅広い選択肢の中から作品を選ぶことができました。公開された作品は、その製作国が明記されており、日本国内の作品だけでなく、海外の文化的側面も垣間見ることができる年となりました。

日本映画の動向

この年の日本映画は、年間399本という本数が示す通り、非常に多くの作品が生み出されました。ジャンルも多岐にわたり、観客の様々なニーズに応えていたことがわかります。

時代劇においては、三船敏郎主演のヒットシリーズ第二弾『椿三十郎』が正月に公開され、幸先の良いスタートを切りました。また、市川雷蔵主演の『座頭市物語』はこの年に誕生し、以降長く愛される人気シリーズの第一作となりました。さらに、武士道の美学と残酷を描き、国内外で高い評価を受けた小林正樹監督の『切腹』もこの年の公開です。大作としては、東宝創立30周年記念作品として製作された『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』も大きな話題を呼びました。

現代劇では、サラリーマンをテーマにしたコメディや人間ドラマが数多く作られました。『サラリーマン清水港』シリーズや『社長洋行記』とその続編などが典型的な例です。植木等主演の『ニッポン無責任時代』もこの年に公開され、「無責任シリーズ」の礎を築きました。

青春映画や文芸作品も見逃せません。坂本九のヒット曲をタイトルにした『上を向いて歩こう』や、日活青春スター総出演の『銀座の恋の物語』といった歌謡青春映画が人気を博しました。また、林芙美子の半生を描いた成瀬巳喜男監督の『放浪記』や、小津安二郎監督の遺作となった『秋刀魚の味』など、映画史に残る名作もこの年に公開されています。市川崑監督のドキュメンタリータッチの作品『私は二歳』も注目されました。

特撮分野では、日米を代表する怪獣が激突する『キングコング対ゴジラ』が公開され、子供から大人まで熱狂させました。

これらの作品群からは、当時の日本の社会状況や風俗、そして映画界の多様な表現力が読み取れます。

外国映画の紹介

1962年には、アメリカ合衆国を中心に、ヨーロッパ各国からも多くの優れた映画が日本に紹介されました。

アメリカ映画では、ロバート・ロッセン監督、ポール・ニューマン主演の傑作『ハスラー』が公開され、クールな映像と心理描写で話題となりました。スタンリー・キューブリック監督の異色作『ロリータ』も賛否両論を巻き起こしながらも注目を集めました。また、壮大なスケールの戦争映画『史上最大の作戦』や、西部劇の巨匠ジョン・フォード監督の『リバティ・バランスを射った男』など、ハリウッド大作も多数公開されました。ミュージカル映画『ブルー・ハワイ』（エルヴィス・プレスリー主演）や『フラワー・ドラム・ソング』なども人気でした。

ヨーロッパ映画も質・量ともに充実していました。イタリア映画からは、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督のデビュー作『アッカットーネ』や、グァルティエロ・ヤコペッティ監督による衝撃的なドキュメンタリー『世界残酷物語』、ヴィットリオ・デ・シーカ監督のネオリアリズモ作品『ウンベルト・D』などが公開されました。フランス映画では、フェデリコ・フェリーニ監督の『夜』（イタリア/フランス合作）や、ルイ・マル監督の『私生活』（フランス/イタリア合作）など、ヌーヴェルヴァーグ以降の作家性の強い作品が紹介されました。

ポーランドからは、イェジー・カヴァレロヴィチ監督の宗教ドラマ『尼僧ヨアンナ』が、イギリスからは『幽霊島』などが公開されており、多様な国の作品が日本で上映されたことがわかります。

まとめ

1962年は、日本映画が様々なジャンルでヒット作や評価の高い作品を生み出す一方で、外国映画もアメリカ大作からヨーロッパの作家主義作品、ドキュメンタリーまで幅広く紹介された年でした。年間を通じて多くの映画が公開され、映画館は観客で賑わい、まさに日本の映画が隆盛を誇った時代の活況を呈していました。この年に公開された作品リストは、当時の映画文化の豊かさを示す貴重な記録と言えるでしょう。

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