1966年の日本

1966年の日本：変革と波乱の一年

1966年、昭和41年の日本は、高度経済成長期を突き進む社会の変革期を迎えていました。この年は干支では丙午（ひのえうま）にあたり、迷信の影響から出生数が大きく減少するという社会現象も見られました。政治では佐藤栄作内閣のもと、国内外で様々な出来事が起こります。国民生活や文化、インフラなど、多方面で新たな動きが活発化した一年でした。

経済面では、かねてからの懸案であった日本人の海外観光渡航の制限が年初に撤廃され、持ち出し可能な外貨の上限も緩和されました。これは、経済力が向上し、国際化が進む日本を象徴する出来事と言えるでしょう。また、土地や建物の取引に用いられる計量単位がメートル法に完全移行し、尺貫法などの使用が公的に禁止されました。これは、近代的な基準への統一を進める政策の一環でした。

社会的に大きな節目となったのは、日本の総人口が一億人を突破したことです。人口増加が続く一方で、丙午の年の出生数減少は、当時の社会に根強く残る迷信の影響を示す出来事でした。政治の世界では、政界の黒い霧事件が表面化し、茨城県議会の自主解散など、政治不信につながる問題も発生しています。

交通分野では、この年、痛ましい航空機事故が相次ぎました。2月には千歳発羽田行きの全日空機が東京湾に墜落し、乗員乗客全員が犠牲となる事故が発生。さらに3月には羽田空港への着陸寸前だったカナダ太平洋航空機や、富士山付近で空中分解した英国海外航空機も墜落し、多くの命が失われました。これらの事故は、急増する航空需要の陰で安全対策の重要性を改めて浮き彫りにしました。一方で、交通インフラの整備も進み、京葉道路が全線開通したほか、モノレール路線（大船-横浜ドリームランド、姫路）や地下鉄東西線の一部区間が開業。富山新港建設に伴う鉄道の廃止や、長距離路線の延伸（田沢湖線）など、鉄道網にも変化が見られました。旭川空港や宇部空港など、地方空港の開港も進みました。

文化やメディアにおいては、新たな人気コンテンツや商品が続々と誕生しました。テレビでは、年明けに特撮テレビドラマ『ウルトラQ』が始まり、夏には『ウルトラマン』の放送がスタートし、後の人気シリーズの礎が築かれました。また、長寿時代劇となる『銭形平次』や、お茶の間の人気演芸番組『笑点』、海外ドキュメンタリーの『すばらしい世界旅行』、映画解説番組『日曜洋画劇場』などもこの年に放送を開始しています。食品分野では、「サッポロ一番しょうゆ味」や「ゴールデンカレー」、「ポッキー」といった現在も親しまれているロングセラー商品が登場しました。飲料メーカーの伊藤園も設立されたのはこの年です。雑誌では、若い男性向けのグラビア・情報誌『週刊プレイボーイ』が創刊されました。そして、この年の最大の文化イベントの一つは、イギリスの人気ロックバンド、ビートルズの初来日でしょう。日本武道館での公演は社会現象となり、若者文化に大きな影響を与えました。

スポーツ界では、プロ野球で東映の佐々木吉郎投手と西鉄の田中勉投手が相次いで完全試合を達成。読売ジャイアンツはセ・リーグを2連覇し、日本シリーズでも南海ホークスを破って2年連続の日本一を飾りました。高校野球では、中京商（現：中京大中京）が春の選抜大会と夏の選手権大会で優勝し、史上2校目の春夏連覇を達成する快挙を成し遂げました。また、国際マラソン選手権が福岡市で初めて開催され、現在の福岡国際マラソンへと続く歴史が始まりました。

事件としては、静岡県で発生した強盗殺人放火事件で、後に裁判の行方が長く注目されることになる袴田巌氏が逮捕されたのもこの年です。また、未解決となった岡崎の母娘3人殺害事件も発生しています。

1966年は、経済的な発展が進む中で、生活様式や文化が多様化し、国内外との繋がりが深まる一方、大規模な事故や事件、政治問題も表面化するなど、急速な変化の中で社会の様々な側面が露わになった、日本の歴史における重要な一年と言えるでしょう。

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