1969年オランダグランプリ

1969年オランダグランプリ：スチュワートの圧勝とF1界の変革

1969年6月21日、オランダのザントフォールト・サーキットは、F1世界選手権第4戦、オランダグランプリの舞台となりました。安全性の問題によりベルギーGPが中止された影響で、前戦モナコGPから5週間ものインターバルが空いたこのレースは、数々のドラマを観客に提供することになります。

フェラーリの危機とフィアットとの合併

このレースの背景には、深刻な財政難に苦しんでいたフェラーリがありました。しかし、レース開催直前の6月18日、フィアットとの合併が発表され、フェラーリの存続に光明が灯りました。ロードカー部門はフィアットの傘下に入りましたが、モータースポーツ部門であるスクーデリア・フェラーリは、創設者エンツォ・フェラーリの手に委ねられることになり、モータースポーツへの情熱は途絶えることなく受け継がれていくことになります。

空力開発競争と四輪駆動プロトタイプの登場

前戦モナコGPでハイウィングが禁止されたことを受けて、各チームはダウンフォースの確保にしのぎを削っていました。小型ウィング、スポイラー、エアダムなど、様々なエアロパーツが開発され、マシンに装着されました。さらに、ロータスとマトラは、将来のF1技術革新を示唆する四輪駆動マシンの開発にも着手しており、このオランダGPではそのプロトタイプが持ち込まれました。ロータスからはグラハム・ヒルがロータス・63を、マトラからはジャッキー・スチュワートがマトラ・MS84をドライブしました。他のチームも、新型マシンや改良型のマシンでこのレースに臨みました。BRMはジョン・サーティースに新型P139を用意しましたが、期待されたほどの性能は発揮できませんでした。アンティーク・オートモビルズは、従来型のクーパー・T86Bからマクラーレン・M7Bへとマシンを更新しました。このM7Bは、燃料タンクが側面に配置されているのが特徴的なマシンでした。

予選：リントのポールポジション

予選では、ロータスのヨッヘン・リントがポールポジションを獲得。ジャッキー・スチュワートとグラハム・ヒルが続くトップ3を形成しました。2列目にはクリス・エイモン（フェラーリ）とジャッキー・イクス（ブラバム）、3列目にはブルース・マクラーレンとデニス・ハルム（マクラーレン）、ジャック・ブラバム（ブラバム）と、そうそうたるメンバーが名を連ねました。

決勝：スチュワートの独走勝利

スタートでは、グラハム・ヒルがリントからリードを奪うも、すぐにリントが逆転。スチュワートもヒルを追い抜いて2番手に浮上します。しかし、17周目にリントのマシンにトラブルが発生、リタイアを余儀なくされました。これにより、スチュワートがトップに立ち、その後は独走状態に。2位にはジョー・シフェール（ロブ・ウォーカー・ロータス）、3位争いは最終ラップまで続き、クリス・エイモンが制しました。スチュワートは2位のシフェールに24秒もの差をつけて圧勝し、今シーズン3勝目を挙げました。エイモンの3位入賞は、結果的にフェラーリでの最後の表彰台となりました。

レース結果とその後

このレースでは、ジャッキー・スチュワートがファステストラップも記録しました。レース全体を通して、グラハム・ヒル、ヨッヘン・リント、そしてジャッキー・スチュワートがラップリーダーとなりました。このレースの結果、ドライバーズランキングではスチュワートがトップに躍り出ることになります。1969年のオランダGPは、スチュワートの圧倒的な勝利だけでなく、F1界における技術開発競争、そしてフェラーリの変革期を示す重要な一戦となったのです。

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