1971年南アフリカグランプリ

1971年南アフリカグランプリ：アンドレッティの初勝利と波乱の幕開け

1971年のF1世界選手権は、3月6日、南アフリカのキャラミで開催された南アフリカグランプリで幕を開けました。このレースは、後に伝説となるマリオ・アンドレッティのF1初優勝、そして数々のドラマによって彩られた、忘れがたい一戦となりました。

レース前：悲劇と期待

開幕戦を前に、予期せぬ悲劇がチームを襲います。1月、アルゼンチンで開催された非選手権レースでマトラのクリス・エイモンが優勝するなど、明るい兆候が見えた一方、チームメイトのジャン＝ピエール・ベルトワーズはスポーツカーレースでの事故に巻き込まれ、その責任を問われて裁判にかけられることとなりました。この事故はベルトワーズのライセンス停止処分という結果を招き、彼は南アフリカグランプリへの出場を断念せざるを得ませんでした。

エントリーリスト：強豪チームの競演

前年、圧倒的な強さでシーズン終盤を制したフェラーリは、ジャッキー・イクスをエースに、クレイ・レガツォーニ、そしてアメリカ以外でのレースにはマリオ・アンドレッティを起用するという強力な布陣で臨みました。新型マシン312B2の投入が予定されていましたが、テスト中のクラッシュにより、開幕戦での投入は見送られました。

ロータスは前年チャンピオンチームとしてエマーソン・フィッティパルディとレイネ・ウィセルを擁し、新型マシンと共に革新的なガスタービンエンジン搭載車の開発も進めていました。

ティレルはジャッキー・スチュワートとフランソワ・セベールという強力なドライバー陣を擁し、セベールのためにホイールベースを延長した新型マシン002を投入。マーチはロニー・ピーターソン、アンドレア・デ・アダミッチ、アレックス・ソラー＝ロイグという新たなドライバーラインナップで臨み、独特のデザインの新車711を披露しました。

ブラバムはグラハム・ヒルを迎え、地元出身のデイヴ・チャールトンがスポット参戦。マクラーレンはデニス・ハルムとピーター・ゲシンが新型マシンM19Aを駆り、BRMはペドロ・ロドリゲス、ジョー・シフェール、ハウデン・ガンレイと強力な布陣で臨みました。マトラはエイモンを迎えましたが、ベルトワーズの欠場により戦力は減退しました。サーティースはジョン・サーティース自身と、ロルフ・シュトメレン、そしてスポット参戦のブライアン・レッドマンという布陣で臨みました。

プライベートチームからも多くのエントリーがあり、ウィリアムズ、ボニエ、ガンストンなどがレースを盛り上げました。タイヤサプライヤーとしては、ダンロップの後継としてグッドイヤーとファイアストンがしのぎを削る展開となりました。

予選：スチュワートのポールポジション

予選では、ジャッキー・スチュワートが圧倒的な速さでポールポジションを獲得。クリス・エイモン、クレイ・レガツォーニがそれに続きました。マリオ・アンドレッティはフィッティパルディと共に2列目、ジョン・サーティース、デニス・ハルム、ジャッキー・イクスが3列目を占めました。地元ドライバーのデイヴ・チャールトンも健闘し、12番グリッドを獲得しました。

決勝：アンドレッティの初勝利とハルムの悲劇

スタートでレガツォーニがトップに立ちますが、スチュワートとエイモンは出遅れます。フィッティパルディ、イクス、ハルム、ロドリゲス、アンドレッティがレガツォーニを追いかけます。しかし、ハルムは17周目にレガツォーニを抜き、首位に躍り出ます。

レース終盤、ハルムのマシンにトラブルが発生。サスペンションのボルトが外れ、ピットインを余儀なくされました。この隙を突いてアンドレッティがトップに立ち、F1初優勝を飾ります。スチュワートは2位、レガツォーニが3位となり、フェラーリが表彰台を独占しました。ウィセルが4位に入り、エイモンが5位、修理を終えたハルムが6位でフィニッシュしました。

アンドレッティはデビュー10戦目での初優勝、そして初ファステストラップを記録。このレースは、アンドレッティの輝かしいキャリアの幕開けを告げる、そして多くのドラマが凝縮された、忘れられない一戦となりました。

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