1972年アルゼンチングランプリ

1972年アルゼンチングランプリ：スチュワートの圧勝とロイテマンの衝撃デビュー

1972年のF1世界選手権は、1月23日、アルゼンチンのブエノスアイレス・サーキットで開幕を迎えました。12年ぶりにF1カレンダーに復帰したアルゼンチンGPは、95周のレースとして開催され、多くの観客が熱い視線を送る中、ドラマチックな展開が繰り広げられました。

注目を集めたエントリーリスト

このレースには、多くの名ドライバーとチームが参戦しました。前年チャンピオンのティレルは、ジャッキー・スチュワートとフランソワ・セベールの強力な布陣を維持。一方、BRMは新たなスポンサーを獲得し、複数のドライバーを擁する大規模な体制で臨みましたが、エースのジャン＝ピエール・ベルトワーズは訴訟問題の影響で欠場することとなりました。フェラーリはジャッキー・イクスとクレイ・レガツォーニのコンビを継続。マーチはロニー・ピーターソンに加え、将来を期待される若手、ニキ・ラウダを起用しました。ロータスはタイトルスポンサー変更に伴い、マシンカラーリングも一新。エマーソン・フィッティパルディとデビッド・ウォーカーのペアでレースに臨みました。マクラーレンはデニス・ハルムとピーター・レブソン、マトラはクリス・エイモン、サーティースはマイク・ヘイルウッド、ティム・シェンケン、アンドレア・デ・アダミッチといった面々が出走しました。ブラバムはチーム体制を一新し、グラハム・ヒルと新人カルロス・ロイテマンを擁しました。ウィリアムズはマーチのシャシーを購入して参戦しました。また、タイヤサプライヤーとして、グッドイヤーが4種類のコンパウンドを用意し、ファイアストンとの競争を繰り広げました。

予選：ロイテマンが衝撃のポールポジション

予選では、F1デビュー戦を迎えたカルロス・ロイテマンが、地元アルゼンチンの大観衆の注目を集め、見事ポールポジションを獲得しました。これは、1950年イギリスGPのジュゼッペ・ファリーナ、1968年アメリカGPのマリオ・アンドレッティに次ぐ快挙であり、事実上初のデビュー戦ポールポジション獲得となりました。2番手にはジャッキー・スチュワートがつけ、マクラーレン勢が2列目を占めるなど、グッドイヤータイヤ勢が上位を独占しました。

決勝：スチュワートの完全勝利とロイテマンの奮闘

決勝レース当日は、炎天下にも関わらず8万人以上の観客がサーキットに詰めかけました。多くのドライバーがハードタイヤでスタートする中、ロイテマンはウルトラソフトタイヤを選択するという大胆な戦略に出ました。スタート直後、クリス・エイモンのマシンにトラブルが発生し、スタート不能に陥りました。

スタートでスチュワートがロイテマンをかわしてトップに立ち、ハルム、フィッティパルディ、レガツォーニ、ピーターソン、セベール、レブソンと続きます。レース序盤は、スチュワート、フィッティパルディ、ハルムのトップ3が激しいバトルを展開。ロイテマンはタイヤの摩耗に苦しみ、順位を下げてしまいました。その後、セベールとフィッティパルディが相次いでリタイアし、イクスが3位に浮上しました。

スチュワートは一度もトップの座を譲ることなく、95周すべてをリードして優勝。ハルムが2位、イクスが3位という結果となりました。ロイテマンは一時14位まで順位を下げましたが、粘り強い走りで7位まで順位を回復させました。また、ティム・シェンケンがサーティース移籍後初となる5位入賞を果たすなど、新人やチームにとって明るい兆しが見られました。

主要記録

このレースでは、カルロス・ロイテマンのF1デビュー戦でのポールポジション獲得、ティム・シェンケンの入賞、ニキ・ラウダの初完走など、いくつかの記録が達成されました。また、フォード・コスワースエンジンは40回目のポールポジションとファステストラップを記録しました。

1972年アルゼンチングランプリは、スチュワートの圧倒的な強さと、ロイテマンの衝撃的なデビュー、そして数々のドラマによって彩られた、記憶に残る開幕戦となりました。

もう一度検索