1979年の政治

1979年、日本の政治においては衆議院総選挙とその後の党内対立が大きな焦点となり、国際情勢もまた激動の年となりました。

年の始まり、1月にはアメリカ合衆国が中華人民共和国との国交を樹立し、台湾の中華民国とは断交するという歴史的な外交転換が行われました。同時期、アメリカ証券取引委員会がグラマン社の報告書を通じて、日本への航空機売り込みにおける不正の可能性を示唆する出来事がありました。国内では、当時の大平正芳首相が一般消費税の導入に言及し、後の政局に影響を与えることになります。中東では、イラン革命が進行し、パフラヴィー朝の国王が国外へ脱出するという劇的な変化が発生しました。

2月には、イラン革命の指導者であるルーホッラー・ホメイニー師が帰国し、イスラム革命評議会を設置しました。日本では、グラマン疑惑に関連して、衆議院予算委員会で日商岩井の副社長らが証人喚問を受けました。カンボジアを巡る対立が激化し、中国とベトナムの間で武力衝突、いわゆる中越戦争が勃発しました。

3月に入ると、スペインでは総選挙が行われ、アドルフォ・スアレス率いる民主中道連合が再び勝利を収めました。アメリカでは、スリーマイル島原子力発電所で放射能漏れ事故が発生し、原子力安全に対する世界的な懸念が高まりました。

4月には、イランでホメイニー師がイラン・イスラム共和国の樹立を宣言しました。日本の最高裁判所では、服部高顕氏が第9代長官に就任しています。パキスタンでは、ズルフィカール・アリー・ブットー元大統領兼首相に死刑が執行されました。国内の統一地方選挙では、東京都知事に鈴木俊一氏、大阪府知事に岸昌氏といった保守系の候補が当選するなど、地方政治の顔ぶれが刷新されました。

5月には、イギリスで総選挙が実施され、マーガレット・サッチャー率いる保守党が勝利を収め、彼女がイギリス史上初、かつ先進国で初の女性首相に就任しました。日本の自民党では、中川一郎氏が自由革新同友会（中川派）を結成しています。グラマン疑惑を巡っては、衆議院航特委で松野頼三氏が証人喚問されました。

6月には、元号法が成立し、同月中に公布・施行されました。これは日本の歴史において画期的な出来事です。地方政治では、宮崎県の黒木博知事が建設汚職の容疑で逮捕される事件がありました。国際情勢では、アメリカのジミー・カーター大統領とソ連のレオニード・ブレジネフ書記長が第二次戦略兵器制限条約（SALT II）に調印しました。月末には、東京で第5回先進国首脳会議（東京サミット）が開催され、エネルギー問題などが主要議題となりました。

7月には、太平洋のキリバス共和国がイギリスから独立を果たしました。日本の新自由クラブでは路線対立が表面化し、西岡武夫幹事長が離党する事態に発展しました。イラクでは、サダム・フセイン氏が大統領に就任しています。インドシナ難民問題に対処するため、ジュネーヴで国際会議が開かれました。グラマン疑惑に関連し、松野頼三氏は衆議院議員辞職を表明しました。

8月、韓国ではYH貿易の女子工員が偽装廃業に抗議して野党・新民党本部に籠城した際、警察による強制排除が行われ、死傷者が出ました（YH事件）。この事件は、その後の韓国における反政府運動を活性化させる契機となりました。

9月に入ると、日本では一般消費税導入問題などを背景に衆議院が解散されました（増税解散、または一般消費税解散）。日本鉄道建設公団における不正経理（空出張、ヤミ給与）問題も表面化しました。アフリカ中央部では、中央アフリカ帝国でフランス軍が介入し、無血クーデターによってボカサ1世の帝政が崩壊しました。

10月は特に政治的な出来事が集中しました。国際電信電話会社（KDD）による汚職事件が発覚し、社会的な関心を集めました。韓国では、最大野党・新民党の総裁であった金泳三氏が、与党の手法によって議員職を追われるという政治的混乱が生じました（金泳三総裁議員職除名波動）。7日には第35回衆議院議員総選挙が投開票されましたが、与党・自由民主党は単独過半数を獲得できませんでした。この結果を受け、自民党内では大平正芳総裁の責任を巡り、主流派（大平・田中派など）と反主流派（福田・三木・中曽根派など）の間で激しい主導権争いが発生しました。これは後に「四十日抗争」と呼ばれる、戦後政治史に残る派閥抗争の始まりとなります。韓国では、釜山市を中心に学生と市民による大規模な民主化デモ（釜馬民主抗争）が発生し、政府は戒厳令を発令して鎮圧を図りました。月末には、韓国の朴正煕大統領が暗殺されるという衝撃的な事件が発生しました（10・26事件）。自民党の反主流派は、党内改革を目指す「自民党をよくする会」を結成し、四十日抗争はさらに深まっていきました。

11月、四十日抗争は最高潮に達しました。「自民党をよくする会」は福田赳夫前首相を首班指名候補に決定した一方、主流派は大平正芳総裁を候補としました。首班指名選挙では、史上初めて自民党から二人の候補が立ち、決選投票の結果、大平氏が内閣総理大臣に指名されました。これにより、第2次大平内閣が発足し、蔵相に竹下登氏、内閣官房長官に伊東正義氏らが就任しました。党三役も決定し、四十日抗争は一応の収束を見せました。国際的には、イランでテヘランの米大使館が占拠され、多数のアメリカ人が人質となる事件が発生し、後のイラン・アメリカ関係に長期的な影響を与えました。新自由クラブでは、河野洋平代表が辞任し、田川誠一氏が後任となりました。

12月には、ポルトガルで共和国議会選挙が行われ、中道右派の社会民主党が勝利して政権を担うことになりました。韓国では、全斗煥・盧泰愚両将軍を中心とする軍内部のグループが権力を掌握するため、軍の実力者らを逮捕するクーデターが発生しました（粛軍クーデター）。年末には、日本共産党とソ連共産党の間で関係が正常化しました。そして、ソ連軍がアフガニスタンに侵攻し、長期にわたる紛争の始まりとなりました。

1979年は、このように国内外で体制の転換、政治的な混乱、国際紛争など、数多くの重要な出来事が集中した年として記憶されています。

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