2014年の文学

2014年（平成26年）の日本の文学界は、多くの注目すべき出来事がありました。文学賞の選考や発表が年間を通じて行われたほか、過去の文豪に関する新たな資料の発見、そして長年にわたり文学に貢献してきた方々の訃報が相次ぎました。

主要な出来事

この年は、文学賞の選考が活発に行われました。年明けの1月には、2013年下半期を対象とする第150回芥川龍之介賞と直木三十五賞の選考委員会が開催され、それぞれ受賞作が決定しました。春には、第48回蛇笏賞（俳句）や第33回新田次郎文学賞（歴史・時代小説）の選考も行われています。夏の7月には、2014年上半期を対象とする第151回芥川賞・直木賞の選考委員会が再び開催され、話題を呼びました。

資料発見に関する重要な出来事としては、川端康成の旧宅から、彼が若き日の恋人伊藤初代へ宛てた未投函の書簡1通と、初代からの書簡10通が見つかり、7月に雑誌『文藝春秋』でその内容が公開されたことが挙げられます。また、晩年の谷崎潤一郎と、妻・松子とその妹・重子との間で交わされた書簡288通も11月に発見され、大きな関心を集めました。

注目の受賞作

2014年も多くの文学賞が発表されました。国内で最も注目される芥川賞・直木賞では、第150回（2013年下半期）の芥川賞に小山田浩子氏の『穴』、直木賞に朝井まかて氏の『恋歌』と姫野カオルコ氏の『昭和の犬』が選ばれました。第151回（2014年上半期）では、芥川賞を柴崎友香氏の『春の庭』、直木賞を黒川博行氏の『破門』が受賞しています。

その他の主要な文学賞では、第50回谷崎潤一郎賞を奥泉光氏の『東京自叙伝』が受賞。第42回泉鏡花文学賞は、中島京子氏の『妻が椎茸だったころ』と小池昌代氏の『たまもの』に贈られました。新鋭の活躍も見られ、第57回群像新人文学賞を横山悠太氏の『吾輩ハ猫ニナル』が、第36回野間文芸新人賞を松波太郎氏の『LIFE』が受賞。第13回小林秀雄賞は山田太一氏の『月日の残像』、第19回中原中也賞は大崎清夏氏の詩集『指差すことができない』に決定しました。

海外文学賞では、ノーベル文学賞がフランスの作家パトリック・モディアノ氏に授与されました。ブッカー賞はリチャード・フラナガン氏の『The Narrow Road to the Deep North』、フランツ・カフカ賞は閻連科氏が受賞。村上春樹氏はヴェルト文学賞を受賞しています。

刊行された主な作品

2014年には、多くの話題作や重要な書籍が刊行されました。小説分野では、村上春樹氏の短編集『女のいない男たち』や、あさのあつこ氏の『グリーン・グリーン』、上橋菜穂子氏の『鹿の王』、角田光代氏の『笹の舟で海をわたる』、柴崎友香氏の芥川賞受賞作『春の庭』、米澤穂信氏の『満願』など、人気作家の作品が多数発表されました。日本ホラー小説大賞の大賞受賞作である雪富千晶紀氏の『死呪の島』もこの年に刊行されています。

小説以外のジャンルでは、思想家・評論家である内田樹氏の『憲法の「空語」を充たすために』や『街場の戦争論』、竹宮惠子氏と内田氏による対談集『竹と樹のマンガ文化論』、ハンナ・アーレント研究の矢野久美子氏による評伝、そして吉本隆明氏の全集の刊行開始など、様々な分野で重要な出版が見られました。

文学に貢献した人々の逝去

2014年は、長年にわたり日本の文学界を支えてきた多くの作家や研究者が逝去されました。1月には詩人の吉野弘氏やベンガル語文学研究者の奈良毅氏が、3月には小説家の大西巨人氏が、4月には『失楽園』などで知られる小説家の渡辺淳一氏が亡くなられました。6月には小説家の岩橋邦枝氏や、アメリカの作家ダニエル・キイス氏（『アルジャーノンに花束を』）が逝去。7月には、ノーベル文学賞作家のナディン・ゴーディマー氏が亡くなられています。

秋以降も訃報は続き、10月には多才な活動で知られた赤瀬川原平氏が、12月には『竜馬の妻』『五番町夕霧楼』などで知られる小説家の宮尾登美子氏が逝去されました。彼らの残した功績は、後世に受け継がれていきます。

（注：本稿は2014年の主な出来事、受賞、出版、逝去の一部を抜粋して記述しています。）

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