2014年の日本競馬

2014年の日本競馬：変革と課題の一年

2014年、日本競馬界は前年に引き続き様々な変革と課題に直面しました。特に注目すべきは、競馬法改正に伴う勝馬投票券の払戻率変更と、中央・地方競馬で相次いで発覚した競走馬からの禁止薬物検出問題です。

改正競馬法は2012年6月に成立し、主催者が賭式ごとに払戻率を70%から80%の範囲で設定できる権限を付与しました。この法改正を受け、2014年4月1日の施行日以降、JRAおよび各地方競馬主催者は相次いで払戻率の変更を実施しました。これにより、従来ほぼ一律だった払戻率は主催者や賭式によって多様化し、特に単勝・複勝式の払戻率は80%に引き上げられるなど、購入者にとってメリットとなる変更も見られました。また、的中者がいない場合の「特払」の取り扱いも変更され、払戻率に応じた一定額が払い戻される形となりました。

一方で、競馬界全体の信頼を揺るがす事態も発生しました。前年に続き地方競馬で禁止薬物の検出が相次いだほか、この年は中央競馬でも初めて競走馬から禁止薬物が検出されたことが発表されました。レース後の検体検査でカフェインやエフェドリンなどが検出され、該当馬は失格処分となり、関係者への処分や原因究明に向けた調査が行われました。これらの問題は、公正競馬の維持という根幹に関わる課題として、関係者間に緊張をもたらしました。

JRA創立60周年と主要な変更

2014年は日本中央競馬会（JRA）の創立60周年にあたり、記念競走の実施や各種イベント企画など、様々な形で盛り上げが図られました。記念競走では馬連の払戻金に売上の5%相当額が上乗せされる特典も設けられました。

この年は、重賞競走の体系に大きな変更が加えられました。2歳牡馬GIの朝日杯フューチュリティステークスが中山から阪神へ移設。ダートGIのジャパンカップダートは「チャンピオンズカップ」と改称され、国際招待から国際競走に変更されるとともに、施行場が阪神から中京へと移されました。中山競馬場のスタンド改修工事に伴い、スプリンターズステークスや一部のGII・GIII競走が新潟や福島に振り替えられて施行されました。さらに、宝塚記念・ジャパンカップ・有馬記念を除く古馬GI競走でトライアル制が導入され、指定された競走の1着馬に優先出走権が付与されるようになりました。有馬記念ではファン投票による枠順決定方式が導入され、テレビでの生中継も実施されました。その他、ラジオNIKKEI杯2歳ステークスが「ホープフルステークス」に改称されGIIに格上げされるなど、多数の重賞競走で名称変更や格付変更、距離変更が行われました。

開催面では、札幌競馬場のスタンド改修が完了し、2年ぶりに通常開催となりました。また、中山の改修により新潟や福島に開催が振り替えられました。年間総売上は前年比103.7%の約2兆4936億円、総入場人員も前年比100.8%の約614万人となり、ともに前年を上回る好成績を記録。リーディングジョッキーには戸崎圭太騎手、リーディングトレーナーには矢作芳人調教師がそれぞれ初の栄冠に輝きました。

施設面では、指定席から馬券購入が可能な「i-Seat」が京都、ウインズ新横浜、中京で導入されました。場外発売施設では、JRA初の小規模場外「ライトウインズ阿見」が開設されたほか、ウインズ新宿がリニューアルオープン。一方で、ウインズ高崎やウインズ新橋は施設の老朽化などを理由に営業を終了しました。

人事面では、新たに調教師7名、騎手6名（競馬学校卒業生）が免許を取得。また、一度引退した柴田未崎元騎手が再び騎手免許試験に合格し、現役復帰を果たしたことも話題となりました。騎手に対しては、体重調整失敗による原田敬伍騎手やリチャード・エノン騎手への長期騎乗停止、非行を理由とした山崎亮誠騎手や吉田隼人騎手への騎乗停止など、厳しい制裁も適用されました。

特筆すべき出来事としては、2月に関東地方を襲った記録的な大雪により、東京競馬が史上初めて同一開催で4日連続中止となりました。代替開催は行われたものの、一部競走の取りやめや距離変更が生じました。また、農林水産省によりシンクロナイズドスイミングのメダリスト小谷実可子氏がJRA監事に就任。JRA役員に女性が就任したのは初めてのことでした。

地方競馬の動向

地方競馬全体では、平成26年度の売得金総額が前年度比109.2%の約3879億円と3年連続で増加し、多くの主催者で前年実績を上回りました。これはインターネット投票の好調などが要因として挙げられます。一方、総入場人員は前年を下回りました。

インターネット投票環境も進化しました。地方競馬のネット投票サービス「楽天競馬」はシステムを「SPAT4」へ移行し、対応競馬場が拡大。また、南関東公営競馬の投票締切時刻が発走2分前に統一されました。重勝式「オッズパークLOTO」の払戻上限額もJRAのWIN5と同様に6億円に引き上げられました。

新たな賭式として「トリプル馬単」が一部の地方競馬主催者で導入されました。これは最終レースから遡る3競走の馬単を着順通りに全て的中させるもので、インターネット投票限定ながら、大井競馬で地方競馬史上最高となる4045万円超の高額配当を記録するなど、新たな魅力となりました。

各地の競馬場では、南関東の大井競馬が5年ぶりに年間売上1000億円を突破。スタンド改修工事も開始されました。佐賀競馬はインターネット投票の好調により17年ぶりの黒字を達成し、施設の改修も計画されました。高知競馬では会員制のキャッシュレス投票システムが導入され、環境に配慮した投票スタイルが提案されました。また、同競馬所属のセニョールベストが地方競馬史上最多となる400戦出走を達成し、記録を更新して引退しました。兵庫競馬の実況アナウンサー、吉田勝彦氏が同一競馬場での実況継続でギネス世界記録に認定されたことも特筆されます。

国際交流では、韓国との交流競走が日韓双方で開催され、シンガポールからの参戦もありました。また、高知や佐賀所属の女性騎手が海外遠征に挑戦し、日本の地方競馬所属騎手として初のヨーロッパでの騎乗を実現しました。

この年も多くの競走馬がターフを去り、あるいは新たに誕生しました。ロードカナロアやジェンティルドンナといった名馬が引退し、繁殖生活に入りました。また、セダブリランテスやレイデオロ、ソウルスターリングなど、後のクラシック戦線を賑わせる多くのスター候補生が誕生しました。関係者では、長年競馬界に貢献した調教師や馬主、騎手などがこの世を去り、追悼されました。

2014年は、競馬を取り巻く環境が変化し、新たな取り組みが進められる一方で、薬物問題や自然災害による開催中止など、運営上の課題も顕在化した一年でした。これらの経験は、その後の日本競馬の発展に向けた重要な教訓となったと言えるでしょう。

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