2020 JJ

小惑星2020 JJ

小惑星2020 JJは、2020年にその存在が確認された天体で、地球軌道の内外を行き来するアポロ群に分類されます。この天体は極めて微小であり、推定される直径はわずか2.7メートルから6メートル程度です。そのため非常に暗く、観測による明るさを示す絶対等級は約30等級となります。

特徴と軌道

2020 JJは太陽の周りを約1.85年かけて一周する軌道を描いています。その軌道は軌道離心率0.422という比較的大きな値を持つ潰れた楕円形をしており、最も太陽に近づく近日点では地球の軌道よりも内側に入り込み、最も遠ざかる遠日点では火星の軌道よりもさらに外側まで到達します。アポロ群に属する天体は、こうした軌道特性ゆえに地球に接近する可能性があります。

2020 JJも、地球に接近する可能性のある地球近傍天体（NEO）の一つです。特に注目すべきは、地球の軌道とこの小惑星の軌道が最も接近する距離である最小交差距離（Earth MOID）が、わずか526キロメートル（天文単位で3.52×10⁻⁶ au）と極めて小さい点です。これは、将来的に地球へ非常に接近するポテンシャルを持つことを意味します。

発見と地球への接近

2020 JJの発見は、2020年5月4日の出来事でした。アメリカ合衆国アリゾナ州にあるレモン山天文台で行われているレモン山サーベイによる観測画像（UTC 5時53分から6時16分にかけて撮影）の中から、この天体が検出されました。発見当初は「C2QQFV2」という仮の名前で識別されていました。

発見から間もなく行われた軌道解析の結果、2020 JJが地球のすぐ近くを通過する軌道にあることが判明しました。その後の迅速な追跡観測と分析により、この小惑星が発見からわずか6時間以内に地球大気圏に突入する可能性が5%程度あるという初期の分析も発表されました。しかし、その後の精密な計算により、衝突は回避されることが明らかになりました。

そして、発見当日のUTC 12時5分頃、2020 JJは地球の中心から約13,400キロメートル（地表からは約7,000キロメートル）という非常に近い距離で、南太平洋上空を無事通過していったと結論付けられています。これは、月までの距離（約38万キロメートル）と比較しても格段に近い距離でのフライバイでした。

接近の意義

仮に2020 JJが地球大気圏に突入するコースを取ったとしても、その小さなサイズから考えて、ほとんどが大気圏内で燃え尽き、地上に落下する破片はごくわずかだったと考えられています。しかし、このような微小な天体であっても、その発見から地球通過までの時間が非常に短いこと、そして実際に地球に非常に近接する軌道を通る可能性があることを示す事例として、2020 JJの接近は重要です。

実際、この2020年5月4日の接近は、観測史上6番目に地球へ近づいた小惑星として特筆されます。これほど近い距離まで小惑星が接近したのは、2019年10月31日に地表から約6,200キロメートルまで接近した小惑星「2019 UN13」以来のことでした。2020 JJのような小型の地球近傍天体は、発見が直前になることが多く、その軌道決定とリスク評価は常に続けられています。この事例は、地球周辺の宇宙空間を継続的に監視することの重要性を改めて示唆しています。

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