2020 SL1

小惑星2020 SL1は、2020年 9月18日に米国ハワイ州にあるハレアカラ天文台で行われたパンスターズ計画の観測によって発見された天体です。アポロ群に分類される地球近傍小惑星であり、潜在的に危険な小惑星（PHA）としてもリストアップされています。推定される直径は0.9キロメートルから2.0キロメートルの範囲とされ、このサイズは2020年に発見された潜在的に危険な小惑星の中では最大でした。

発見

2020 SL1の発見は、2020年 9月18日のパンスターズ観測によるものです。初めて検出された際、この小惑星はさんかく座の方向にあり、見かけ等級は22.3等級という暗さでした。地球からの距離はおよそ1.94天文単位（約2億9千万キロメートル）で、天空上を毎分0.56秒角の速さで動いている様子が捉えられました。

この発見後、2020 SL1は小惑星センターの地球近傍天体確認ページ（NEOCP）に「P116Atg」として仮登録されました。世界各地の観測所による追跡観測が実施され、より正確な軌道情報が得られることとなりました。特に、アリゾナ大学のレモン山サーベイが同年8月下旬および9月中旬に既に観測していたデータとの照合が行われ、天体の存在が確認されました。これらのフォローアップ観測および過去データの検証を経て、2020年 9月19日に「2020 SL1」として正式に公表されました。

さらに、その後の詳細な調査によって、2020 SL1は過去にも複数の観測で捉えられていたことが判明しました。パンスターズ計画による2012年11月から2015年1月にかけての観測記録や、レモン山サーベイによる2012年10月のデータの中に、この小惑星の姿が見出されました。最も古い観測記録としては、2008年 10月25日にスローン・デジタル・スカイサーベイによって撮影された3枚の画像に特定されています。これらの長期間にわたるデータは、2020 SL1の軌道を極めて高精度に決定する上で重要な役割を果たしています。

軌道と分類

2020 SL1は、約3.99年かけて太陽の周りを一周する軌道を持っています。太陽からの平均距離は約2.52天文単位です。その軌道は、0.64という大きな離心率を持つ楕円形で、黄道面に対して約14度傾いています。太陽に最も近づく近日点では0.91天文単位、最も遠ざかる遠日点では4.1天文単位の距離に達します。この軌道は、近日点付近で地球の軌道と交差し、遠日点付近では火星の軌道の外側まで広がっています。

地球軌道と交差すること、そして軌道長半径が1天文単位より大きいという特徴から、2020 SL1はアポロ群に分類されます。このグループに属する小惑星は、地球に比較的近い軌道を通過する可能性があります。

2008年以降の12年以上にわたる長期的な観測データが利用可能であるため、2020 SL1の軌道は非常に精密に計算されており、軌道情報の不確定性を示すパラメータは「1」という低い値です。これは、将来の軌道予測の信頼性が高いことを示しています。

物理的特性

小惑星のサイズは、その絶対等級（見かけ上の明るさを、天体が太陽から1天文単位、観測者からも1天文単位の距離にあると仮定した場合の等級）と、表面の反射率を示す幾何アルベドに基づいて推定されます。2020 SL1の絶対等級は17.35であり、一般的なアルベドの値（例えば0.25または0.05）を仮定すると、その直径は0.9キロメートルから2.0キロメートルの範囲であると推測されます。このサイズは、2020年に発見された潜在的に危険な小惑星の中では最も大きく、次に大きかった小惑星2020 QF6（絶対等級17.8）を上回ります。

潜在的危険性

2020 SL1は、その大きな推定サイズと、地球軌道との最小交差距離が小さいことから、潜在的に地球に衝突する可能性のある「潜在的に危険な小惑星」（PHA）として分類されています。しかし、現在の高精度な軌道計算によると、今後200年間の間に、この小惑星が地球から0.1天文単位（約1500万キロメートル）よりも近い距離に接近することは予測されていません。

過去において、2020 SL1が地球に最も接近したのは1972年 7月10日です。この時、地球から約0.073天文単位（約1090万キロメートル）の距離を通過しました。これは、今後予測されるどの接近よりも近い距離でした。

PHAに分類されているものの、現在の知見に基づけば、少なくとも今後数世紀にわたって地球に直接的な脅威をもたらす可能性は極めて低いと考えられています。

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