2022年の日本競馬

2022年（令和4年）の日本競馬界は、新型コロナウイルス感染症の影響が一部残る中でも、開催制限の緩和が進んだことで、中央競馬・地方競馬ともに売上および入場者数が大きく回復し、数々の記録が更新された一年でした。

新型コロナウイルス感染症の影響と対応

コロナ禍に伴う影響は引き続き、一部施設での入場制限や場外発売施設の払戻有効期限に関する対応が継続されました。人馬交流競走については、上半期に騎乗制限が設けられましたが、6月以降は緩和され、中央・地方の指定交流競走への騎乗が原則可能となりました。

中央競馬の動向

日本中央競馬会（JRA）は、年間総売上3兆2539億円余りを記録し、2年連続で3兆円を突破しました。開催競馬場への総入場者数は約279万人に達し、前年比386.2%と大幅な回復を見せました。年間で行われた競走数は3456で、JRA史上最多タイとなりました。

開催日程では京都競馬場の整備工事に伴う開催休止が続きましたが、3日間開催が増加しました。夏季には暑さ対策として札幌と新潟の2場開催が実施され、主要競馬場の馬房にクーラー設置が進められるなど、競走馬への配慮も強化されました。

GI競走の賞金は大幅に増額され、特にジャパンカップと有馬記念は1着賞金が4億円に設定されました。グレード競走の変更や、優先出走権に関する規定の見直しも行われました。

場外発売においては、一部ウインズでの金曜発売休止や、インターネット投票におけるGI発売開始時刻の繰り上げ、J-PLACEの一部での発売レース拡大などが行われました。また、一部施設の払戻業務に変更がありました。

払戻金上乗せ施策として「JRAプラス10」が継続されたほか、「JRAプレミアム」の対象にワイドが追加されました。「JRAスーパープレミアム」では、指定開催日の全投票法で払戻率が80%に設定されました。

その他の特筆すべき出来事として、新規調教師の開業、元調教師の藤沢和雄氏の顕彰者選定、ジョッキーベイビーズの再開、外国馬直接入厩を可能にする国際厩舎の完成、競走馬トラッキングシステムの導入実験、仙台市への新たな競馬観戦施設「VIESTA」開設、環境に配慮した「クリーンエネルギー競馬」の実施などがありました。GI競走における1番人気の連敗記録（重賞18、平地GI15/16）も話題となりましたが、それぞれ記録がストップしました。一方で、騎手の体重調整失敗による長期の騎乗停止処分（西谷凜騎手）なども発生しました。

地方競馬の動向

地方競馬全体では、年間総売得金が1兆703億円余りとなり、史上初めて1兆円を突破し過去最高を記録しました。総入場者数も前年比163.1%と大きく増加しました。

競馬法が改正され、JRAからの資金支援の延長、馬産地振興支援の恒久化に加え、競馬の公正を確保するための措置が強化されました。特に、馬主への処分規定や、厩舎関係者の馬券購入に関する罰金上限引き上げは大きな変更点です。

地方競馬全国協会とJRAを中心とした関係者間で、2歳・3歳馬および古馬ダート競走体系の抜本的な整備計画が発表されました。この計画には、羽田盃・東京ダービーのJpnI格付け化による「3歳ダート三冠競走」の確立、その前哨戦整備、既存ダートグレード競走の見直し、そして2033年までに全てのダートグレード競走を国際競走とする「国際化」へのロードマップが盛り込まれています。

各地の主催者では、南関東4場が全て年間売上過去最高を更新しました。名古屋競馬場は弥富市への移転を完了し、新競馬場での開催が始まりました。笠松競馬ではコロナ感染による開催中止や競走馬の放馬事案が発生しました。岩手競馬では売上好調の一方で、関係者の逮捕という不祥事がありました。兵庫競馬では薄暮開催を巡る住民との課題や、実況アナウンサーの交代がありました。佐賀競馬では九州産馬限定戦が初めて実施され、競馬場移転50周年を迎えました。ばんえい競馬は売上を伸ばし新たな試みも行いましたが、運営体制に関する議論や登録頭数確保の課題も抱えています。

年間を彩った記録と話題

2022年は、競馬界で多くの出来事がありました。

GI戦線では、フェブラリーステークス（カフェファラオ連覇）、桜花賞・優駿牝馬（スターズオンアース牝馬二冠）、東京優駿（武豊騎手最年長勝利）、宝塚記念・天皇賞（春）（タイトルホルダー）、安田記念（ソングライン）、菊花賞・天皇賞（秋）・有馬記念（イクイノックス）、マイルチャンピオンシップ（セリフォス）、ジャパンカップ（ヴェラアズール）、阪神ジュベナイルフィリーズ（リバティアイランド）、ホープフルステークス（ドゥラエレーデ）などが注目を集めました。
海外遠征でも日本馬が活躍し、サウジカップデーで4勝、ドバイワールドカップデーで5勝を挙げました。
騎手では、武豊騎手や今村聖奈騎手が数々の記録を達成したほか、柴田善臣騎手の黄綬褒章受章や最年長勝利記録更新、女性騎手3名同日勝利、新人騎手の記録達成などが話題となりました。
主な引退・死亡馬には、ワグネリアン、タイキシャトル、ゼンノロブロイ、オジュウチョウサンなどが名を連ねます。特にオジュウチョウサンは11歳で中山グランドジャンプを制覇し、障害競走初の引退式も行われました。
各種セリ市では高額取引が相次ぎ、セレクトセールは過去最高記録を更新しました。
兵庫競馬の柳田泰己騎手がニュージーランドでのレース中に落馬し、後に逝去されたことは競馬界全体に衝撃を与えました。

2022年は、コロナ禍からの回復と発展、そして将来に向けた改革が同時に進行した、活気あふれる一年となりました。

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