2023 DW

2023 DW：地球近傍小惑星の軌跡

2023 DWは、地球近傍小惑星（NEO）に分類される天体です。発見当初はトリノスケールで「1」と評価され、地球への衝突可能性が懸念されましたが、その後の観測によりリスクは大幅に低下し、現在は最も低い「0」に格下げされています。

発見と特徴

2023 DWは、2023年2月26日にチリのサンペドロ・デ・アタカマで行われた「MAP asteroid search program」で、ジョルジュ・アタールとアラン・モーリーによって発見されました。発見当初は「3BP2721」という仮符号で呼ばれていましたが、翌日には小惑星センターの小惑星電子回報（MPEC）で「2023 DW」という正式な仮符号が与えられました。

発見時、2023 DWは毎分9.29秒という速度で天球上を移動しており、ろくぶんぎ座の方向に位置していました。その軌道は、太陽からの平均距離が約0.82天文単位（約1億2267万km）、離心率が0.396の楕円軌道を描き、約270日かけて太陽を公転しています。太陽からの遠日点距離が0.983天文単位を超えるため、2023 DWは地球近傍小惑星の中でもアテン群に属します。また、地球の軌道と交差する地球横断小惑星であり、地球軌道との最小交差距離（MOID）は約0.0005天文単位（約74,800km）と非常に近いことが特徴です。

ジェット推進研究所内の地球近傍天体研究センター（CNEOS）による2023年3月19日時点の推定では、2023 DWの直径は約47mとされています。

地球への接近と衝突リスクの変動

発見からわずか1日後の2月28日、観測データに基づく軌道計算の結果、2046年2月14日に地球へ衝突する確率が0.085%と算出され、トリノスケールで「1」と評価されました。当時、トリノスケールが「1」以上と評価されたのは2023 DWのみで、他の小惑星は全て「0」と評価されていました。欧州宇宙機関（ESA）の地球近傍天体調整センター（NEOCC）も、2023 DWの衝突確率を比較的高いとし、リスクリストに掲載しました。

この衝突確率の高さから、2023 DWの発見はメディアで大きく取り上げられました。しかし、衝突した場合でも地球全体への影響は限定的と考えられており、小惑星の大きさから、人口密集地に落下した場合に深刻な被害をもたらす可能性が指摘されています。

一部の研究者は、2023 DWが衝突した場合の落下地点を予測しており、インド半島沖のインド洋から太平洋を横断し、アメリカ南部付近までの細長い領域が落下しうる地域として挙げられています。

しかし、その後の観測で2046年の接近時に地球へ衝突する可能性は非常に低いことが判明しました。NASAは3月8日に、「軌道の不確実性を減らし、将来の軌道を正確に予測するには、さらに数週間のデータが必要である」と発表し、観測を継続することを明らかにしました。

その後、衝突確率は3月12日に0.28%まで上昇しましたが、その後の観測で急激に低下し、3月16日には0.028%まで減少しました。これにより、CNEOSは2023 DWのトリノスケールを「0」に格下げしました。NEOCCも3月14日に同様の格下げを行いました。

3月19日には、118回分の観測結果から算出された軌道計算の結果、2046年の接近で衝突する可能性はほぼなくなり、衝突確率は約2200万分の1と無視できる程度にまで低下しました。3月20日、CNEOSは2023 DWの潜在的な衝突リスクが完全に排除されたと発表し、リスク評価を終了しました。同時に、NEOCCも2023 DWをリスクリストから除外しました。

JPL Small-Body Databaseの計算によると、2046年の地球への最接近距離は、約473万km（月までの距離の約12.3倍）とされています。

将来の接近

2023年3月21日時点のJPL Small-Body Databaseのデータによると、2046年以降にも22世紀末までに3度、地球に接近する機会があります。特に2179年2月16日には、地球から約205万7000km（月までの距離の約5.35倍）にまで接近すると予測されています。

まとめ

2023 DWは、一時的に地球への衝突リスクが懸念されたものの、その後の観測によりそのリスクは大幅に低下しました。この事例は、天体衝突のリスク評価が観測データによって大きく変動することを示しており、継続的な観測の重要性を物語っています。

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