87式対戦車誘導弾

87式対戦車誘導弾（ATM-3）の概要

87式対戦車誘導弾、またの名をATM-3は、日本の陸上自衛隊で運用される第2.5世代の対戦車ミサイルです。このミサイルは、64式対戦車誘導弾の後継機として開発され、国内で初めてレーザー誘導方式を取り入れています。防衛省ではこのミサイルを「中MAT」と名付け、広報活動では「タンクバスター」として知られ、87ATMという通称も併用されています。

開発の経緯

87式対戦車誘導弾は、64式対戦車誘導弾のさらなる進化版として1978年から技術研究本部にて研究・開発が開始されました。1982年に試作が始まり、1987年に正式に配備されることとなりました。このミサイルは全国の普通科連隊や対戦車隊において使用されるため、効率的な対戦車戦術の構築に寄与しています。

構造と機能

この対戦車ミサイルシステムは、発射機、レーザー照射機、そして暗視装置から成り立っています。ミサイル本体は発射筒に収納される形で装備され、セミアクティブ・レーザー・ホーミング（SALH）誘導方式を使用しています。この誘導方式の特徴として、誘導用のワイヤーが不要となり、ミサイルの飛翔速度が250メートル毎秒以上（推定では400メートル毎秒）となり、高速化されています。

発射機とレーザー照射機、暗視装置は三脚架に一体化されるほか、200メートル以内の発射においては、これらの機器を分散配置することで、発射者の安全性を高めることができます。また、レーザー照射機には照準器が装備されており、夜間戦闘にも対応可能です。操作を行うのは射手、照準手、弾薬手の三名で、73式小型トラックを使用して運搬されることもあります。

ミサイル本体の重量は12kgと軽量化され、隊員が手軽に扱えるようになっています。さらに、三脚架のほか、肩に担いでの発射も可能です。システム全体の重量は、ミサイルを6発携行した場合でも140kgに収まります。

調達と展望

平成17年度からの中期防衛力整備計画に基づき、87式対戦車誘導弾の発射機の新規調達は平成18年度に終わりました。今後の発展として、87式対戦車誘導弾及び79式対舟艇対戦車誘導弾の後継モデルとなる中距離多目的誘導弾の開発がすすめられています。

メディア登場

87式対戦車誘導弾は、様々なメディアにも登場しています。たとえば、マンガ『続・戦国自衛隊』の中では大手門を破壊するために使用され、アメリカ軍の装備に対する攻撃にも利用されています。また、小説『ルーントルーパーズ 自衛隊漂流戦記』では異世界で自衛隊の装備として登場し、敵に対抗するための重要な武器となっています。加えて、ゲーム『Wargame Red Dragon』にも収録され、特徴的な名称である「CHU-MAT」としても認知されています。

このように、87式対戦車誘導弾は、日本の防衛力の一端を担う重要な装備であり、今後もその役割は期待されています。

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