対戦車隊

陸上自衛隊の対戦車隊：変遷と現状

陸上自衛隊における対戦車隊は、敵の戦車や装甲車、舟艇などを撃破することを主な任務とする専門部隊です。これらの部隊は、方面隊や師団、旅団の直轄部隊として編成され、主に普通科職種の隊員で構成されています。

概要

対戦車隊は、対機甲火力を用いて敵の脅威に対処する部隊であり、その規模は部隊の特性に応じて異なりますが、一般的に隊や中隊単位で約100名程度で編成されます。隷下には3個の射撃小隊があり、各小隊は4個の射撃分隊を編成します。隊編成の部隊では指揮官が2等陸佐、中隊編成では3等陸佐が指揮を執り、本部機能として射撃小隊の他に支援部隊が配置されます。

装備の変遷

設立当初、対戦車隊は75mm無反動砲や106mm無反動砲を装備していました。その後、対戦車誘導弾の開発に伴い、64式MATが導入され、現在では各種対戦車誘導弾が運用されています。1991年以降の中期防衛力整備計画では、96式多目的誘導弾システム（MPMS）の装備が進められ、対舟艇対戦車隊に改編された部隊を除き、師団や旅団隷下の対戦車隊は廃止されました。ただし、一部の師団では廃止された対戦車隊の人員や装備を普通科連隊隷下の対戦車中隊として増強する動きもありましたが、2018年までに逐次廃止されました。

対舟艇対戦車隊

対舟艇対戦車隊は、方面隊の対舟艇・対戦車火力を担当します。第2師団では、師団の定員削減に伴い、普通科連隊対戦車中隊を集約し、第2対舟艇対戦車中隊として再編成しました。また、第4対舟艇対戦車隊は西部方面対舟艇対戦車隊に、第11対戦車隊は北部方面対舟艇対戦車隊に改編され、方面隊の火力の中核を担っています。これらの部隊は方面隊直轄ですが、北部方面対舟艇対戦車隊は第11旅団を主な火力支援先としており、西部方面対舟艇対戦車隊は第8師団に隷属しています。

最新装備と今後の展望

中距離多目的誘導弾（中多）は、87式対[[戦車誘導弾]]（中MAT）の後継として導入されました。中多は従来の79式対舟艇対[[戦車誘導弾]]（重MAT）以上の能力を持ち、連隊レベルでの運用が適切であることから、連隊直轄部隊に配備される予定です。また、中期防衛力整備計画（2014）では、機動部隊に改編する部隊を中心に、普通科中隊の対戦車小隊を廃止し、連隊本部管理中隊に対舟艇対戦車小隊を編成し、中多を運用する計画が立てられています。一部の部隊では、水陸機動連隊が対戦車中隊を編成しているほか、第1空挺団の普通科大隊や警備隊でも本部中隊に対戦車小隊が置かれています。

教育と研究

対戦車隊の教育部隊では、MPMSに関する初級陸曹ATM課程や、中距離多目的誘導弾に関する特技課程の教育を行っています。また、富士教導団本部付隊対戦車小隊や普通科教導連隊本部管理中隊対戦車小隊では、MPMSや中距離多目的誘導弾、車両を活用した戦術の研究を行っています。

編成

対戦車隊の編成は以下の通りです。

方面対舟艇対戦車隊

隊本部：総務・人事、情報、管理、通信、衛生、弾薬、前進観測班（FO）
第1～第3対舟艇対戦車小隊

師団対舟艇対戦車中隊

中隊本部：総務・人事、管理、通信、衛生、弾薬、前進観測班（FO）
第1～第2対舟艇対戦車小隊

旅団対戦車中隊

中隊本部：総務・人事、補給、車両、火器、弾薬係等、通信、衛生、弾薬班
第1～第3小隊

連隊等直轄対戦車小隊

小隊本部
弾薬班
前進観測班（FO）
第1～第4射撃分隊

現在の対戦車部隊

現在、陸上自衛隊に編成されている主な対戦車隊は以下の通りです。

北部[[方面隊]]
北部方面対舟艇対戦車隊（倶知安駐屯地）
第2対舟艇対戦車中隊（上富良野駐屯地）
西部方面隊
西部方面対舟艇対戦車隊（玖珠駐屯地）

この他にも、富士教導団本部付隊や水陸機動団、第1空挺団、各即応機動連隊・普通科連隊（一部）にも対戦車部隊が編成されています。

廃止された部隊

過去には多くの対戦車隊が編成されていましたが、部隊の改編や装備の更新に伴い、多くの部隊が廃止されました。以下は主な廃止された対戦車隊の一覧です。

第1対戦車隊（板妻駐屯地）
第2対戦車隊（上富良野駐屯地）
第3対戦車隊（大津駐屯地）
第4対戦車隊（玖珠駐屯地）
第5対戦車隊（鹿追駐屯地）
第6対戦車隊（大和駐屯地）
第8対戦車隊（北熊本駐屯地）
第9対戦車隊（八戸駐屯地）
第10対戦車隊（春日井駐屯地）
第11対戦車隊（倶知安駐屯地）
第12対戦車隊（新町駐屯地）
第13対戦車隊（出雲駐屯地）
その他、多数の普通科連隊隷下の対戦車中隊

対戦車隊の沿革

対戦車隊は、1958年の第1空挺団無反動砲隊の新編から始まり、1962年には各地に対戦車隊が編成されました。その後、対戦車誘導弾の導入や部隊の改編を経て、現在に至ります。以下は対戦車隊の主な沿革です。

1958年：第1空挺団無反動砲隊が新編
1962年：各地に対戦車隊が新編
1968年：第1空挺団無反動砲隊が対戦車隊に改編
1990年代以降：対戦車誘導弾の導入、部隊の改編
2000年代以降：対舟艇対戦車隊への改編、中距離多目的誘導弾の導入

部隊の詳細

師団対戦車隊等

第1対戦車隊：板妻駐屯地に駐屯していた第1師団隷下の普通科（対戦車）部隊。
第2対戦車隊：上富良野駐屯地に駐屯していた第2師団直轄の普通科（対戦車）部隊。
第2対舟艇対戦車中隊：上富良野駐屯地に駐屯する第2師団直轄の普通科（対戦車）部隊。
第3対戦車隊：大津駐屯地に駐屯していた第3師団隷下の普通科（対戦車）部隊。
第4対戦車隊：玖珠駐屯地に駐屯していた第4師団隷下の普通科（対戦車）部隊。
第4対舟艇対戦車隊：玖珠駐屯地に駐屯していた第4師団隷下の普通科（対戦車）部隊。
第5対戦車隊：鹿追駐屯地に駐屯していた第5師団隷下の普通科（対戦車）部隊。
第6対戦車隊：大和駐屯地に駐屯していた第6師団隷下の普通科（対戦車）部隊。
第8対戦車隊：北熊本駐屯地に駐屯していた第8師団隷下の普通科（対戦車）部隊。
第9対戦車隊：八戸駐屯地に駐屯していた第9師団隷下の普通科（対戦車）部隊。
第10対戦車隊：春日井駐屯地に駐屯していた第10師団隷下の普通科（対戦車）部隊。
第11対戦車隊：俱知安駐屯地に駐屯していた第11師団隷下の普通科（対戦車）部隊。
第12対戦車隊：新町駐屯地に駐屯していた第12師団隷下の普通科（対戦車）部隊。
第13対戦車隊：出雲駐屯地に駐屯していた第13師団隷下の普通科（対戦車）部隊。

旅団対戦車中隊等

第5対舟艇対戦車中隊：帯広駐屯地に駐屯していた第5旅団隷下の普通科（対戦車）部隊。
第12対戦車中隊：新町駐屯地に駐屯していた第12旅団隷下の普通科（対戦車）部隊。
第13対戦車中隊：出雲駐屯地に駐屯していた第13旅団隷下の普通科（対戦車）部隊。

普通科連隊隷下の対戦車部隊

第3普通科連隊対戦車中隊：名寄駐屯地に駐屯していた第3普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第25普通科連隊対戦車中隊：遠軽駐屯地に駐屯していた第25普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第26普通科連隊対戦車中隊：留萌駐屯地に駐屯していた第26普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第7普通科連隊対戦車中隊：福知山駐屯地に駐屯していた第7普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第36普通科連隊対戦車中隊：伊丹駐屯地に駐屯していた第36普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第37普通科連隊対戦車中隊：信太山駐屯地に駐屯していた第37普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第20普通科連隊対戦車中隊：神町駐屯地に駐屯していた第20普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第22普通科連隊対戦車中隊：多賀城駐屯地に駐屯していた第22普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第44普通科連隊対戦車中隊：福島駐屯地に駐屯していた第44普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第12普通科連隊対戦車中隊：国分駐屯地に駐屯していた第12普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第24普通科連隊対戦車中隊：えびの駐屯地に駐屯していた第24普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第42普通科連隊対戦車中隊：北熊本駐屯地に駐屯していた第42普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第43普通科連隊対戦車中隊：都城駐屯地に駐屯していた第43普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第14普通科連隊対戦車中隊：金沢駐屯地に駐屯していた第14普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第33普通科連隊対戦車中隊：久居駐屯地に駐屯していた第33普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第35普通科連隊対戦車中隊：守山駐屯地に駐屯していた第35普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。
第49普通科連隊対戦車中隊：豊川駐屯地に駐屯していた第49普通科連隊隷下の普通科（対戦車）部隊。

その他の部隊

第1空挺団対戦車隊：習志野駐屯地に駐屯していた第1空挺団隷下の部隊。
第2混成団本部中隊対戦車隊：善通寺駐屯地に駐屯していた第2混成団本部中隊隷下の部隊。
普通科教導連隊対戦車中隊：滝ヶ原駐屯地に駐屯していた普通科教導連隊隷下の部隊。

歴代の装備火器

対戦車隊で使用された主な装備火器は以下の通りです。

M20 75mm無反動砲
M40 106mm無反動砲
60式自走106mm無反動砲
64式対戦車誘導弾
87式対[[戦車誘導弾]]
79式対舟艇対[[戦車誘導弾]]
96式多目的誘導弾システム
中距離多目的誘導弾

対戦車隊は、陸上自衛隊の機甲戦力の中核として、装備や編成を変化させながら、常に最前線で活躍しています。

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