A列車で行こう (列車)

A列車で行こう

「A列車で行こう」は、JR九州が熊本駅と三角駅の間を鹿児島本線・三角線経由で運行する臨時特急列車です。観光列車として、熊本と天草を結ぶ役割を担っています。ここでは、「A列車で行こう」の概要、列車名の由来、運行概況、停車駅、使用車両、そして三角線を走った優等列車の歴史について詳しく解説します。

概要

特急「A列車で行こう」は、2011年10月8日に運行を開始しました。熊本市と天草諸島を結ぶ観光ルートの一部として、三角駅で天草宝島ラインに接続しています。運行開始に合わせて、熊本駅 - 三角駅間には「あまくさみすみ線」の愛称が付けられました。三角駅のリニューアルも同時に行われています。

国鉄時代、三角線は阿蘇と島原半島を結ぶ観光ルートの一部であり、急行列車も運行されていましたが、1986年に急行「火の山」の直通が終了し、優等列車は姿を消しました。「A列車で行こう」は、三角線にとって約30年ぶりの優等列車であり、初の特急列車となります。

列車名の由来

列車名の「A」は、南蛮文化が渡来した天草をモチーフに、ヨーロッパをイメージした大人の旅を演出するというコンセプトから来ています。Adult（大人）やAmakusa（天草）の頭文字が由来です。

運行概況

「A列車で行こう」は、主に土曜・休日や長期休暇期間中に、熊本駅 - 三角駅間を1日3往復しています。2両編成で、車掌は乗務せず、客室乗務員が車内改札を行うワンマン運転です。三角駅では、天草宝島ラインの「シークルーズ号」と接続しており、ダイヤも「A列車で行こう」の運行時刻に合わせて改正されています。

熊本駅 - 本渡港または松島（前島港）間では、「A列車で行こう」と「シークルーズ号」、または九州産交の快速バス「あまくさ号」を組み合わせた往復割引乗車券「A列車&SBきっぷ」も発売されています。

2013年3月16日までは1日2往復でしたが、一部列車は博多駅まで延長運転されていました。博多駅と三角駅を直接結ぶ優等列車は、過去に日豊本線・豊肥本線経由で運行されたことがありましたが、鳥栖駅を経由するものは初めてでした。

停車駅

熊本駅
宇土駅
網田駅（下りのみ停車）
三角駅

博多駅 - 熊本駅間は臨時延長時のみ運行されます。

使用車両・編成

熊本車両センター所属のキハ185系気動車2両が改造され、専用車両として使用されています。車両デザインは水戸岡鋭治氏が担当しました。以前は、豊肥本線の特急「あそぼーい!」の車両改造工事が終わるまで、「阿蘇ゆるっと博号」として運行されていました。

「16世紀大航海時代のヨーロッパ文化」と「古き良き“あまくさ”」をテーマにしたデザインが特徴で、黒とゴールドのツートンカラーが目を引きます。車内は教会をイメージし、カウンターバーやステンドグラスで彩られています。

定員は1号車28人、2号車56人の計84人で、全席普通車座席指定席です。1号車にはバー「A-TRAIN BAR」が設けられ、ビールやハイボール、オリジナルカクテルなどが提供されます。2号車には4人用セミコンパートメント席が4区画設置されています。BGMには、向谷実氏がアレンジしたジャズのスタンダードナンバー「A列車で行こう」が使用されています。

また、燃料には天草市とのタイアップで調達したバイオディーゼルの使用も検討されています。

三角線優等列車沿革

三角線には、かつて豊肥本線直通の優等列車が運行されていました。1963年には、準急「火の山」の一部が三角駅 - 別府駅間で運転を開始。1964年には、博多駅・門司港駅 - 熊本駅・西鹿児島駅間の急行「ひかり」の一部が三角駅始発となりました。その後、「ひかり」は「くさせんり」と改称され、急行「九重」として長崎駅・佐世保駅まで乗り入れるようになりました。

1960年代後半には、「火の山」が三角駅発着の列車として運行され、1970年代までその姿を見ることができました。しかし、1986年のダイヤ改正で「火の山」の三角線乗り入れが終了し、三角線から優等列車は姿を消しました。

2004年には、熊本駅 - 三角駅間に天草グルメ快速「おこしき」が運転されましたが、2011年に廃止。同年、特急「A列車で行こう」が運行を開始し、25年ぶりに優等列車が復活しました。

その後、「A列車で行こう」は増発や博多駅への延長運転などを経て、現在に至ります。2020年には、新型コロナウイルスの影響で運休期間がありましたが、2022年には網田駅への停車が開始されました。

「A列車で行こう」は、三角線の歴史と文化を繋ぐ、重要な役割を担っていると言えるでしょう。

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